花骸のこどもたち
ドキッ兄弟二人の無礼講
「扉間、孫との生活はどうかの。慣れたか」
「孫の初体験がいつか気になって夜も眠れん」
「眠れんのは死体だからじゃろ……いや、初体験? 何の初体験ぞ」
「セックスだ」
「貴様はもちっと自分のビジュアルが産む弊害を考えるべきぞな。正直言うてワシも『あっヤバイ、近親相姦ぞ』と思わんでもない。ぶっちゃけそこで堂々とセックスとか言える神経を疑う」
「ワシのほうがマダラより数歳若いし里抜けもしてないし戦争の火種も作ってない!」
「いやいやいや、祖父と孫ぞ! ビール一杯でそこまで発奮するな。マダラは他人、それだけでまだマダラのほうがマシぞ。そもそも貴様は大恋愛の末に娶った妻がおったろうに」
「その妻とワシの愛の結晶が未成年のうちに性行を持たされてたと知って冷静でいられるか」
「そもそも、トバリとマダラが一線超えてるのなどとうに分かってたはずぞ」
「知らん。いつ、何月何日何時何分何才の頃からだ」
「……キレるじゃろ」
「……落ち着いた。言われてみれば兄者の言う通りだ。祖父と孫とは言え、トバリにとっては所詮祖父らしいことなど何一つしてくれなかった、遺伝子上のみの繋がり。今更祖父を気取るのもバカバカしい……アレも成人ともなれば、最早ワシに出来るのはその選択を見守ってやるぐら」
「十三才」
「は?」
「出会った当時が十二才でまだイズナがおった頃に薬盛っ……いや、十四じゃった十四!」
「あの男、十四才で右も左も分からんトバリに薬を盛って乱暴したのか?!!」
「いやワシの思い違いぞ、酒じゃった」
「大した違いではないわ!!!!」
「まあ始まりはどのような形でも今は相思相愛なのだし」
「洗脳されとるだけだろうが!! 兄者は弟の孫がこのような目に合わされて何とも思わんのか? 自分の孫が、ツナが酒で潰された挙句犯されたらどうする」
「殺す」
「そうだろう」
「しかしマダラはトバリを大切に思っとるし、単なる愉快犯とは違う。ビジュアル的には釣り合うし、当人達が幸せならやはり見守ってやるのが祖父としての義務ぞ」
「兄者もしかしてビジュアルという言葉気に入ってる?」
「それに戦時下の仕方ないこととはいえ、マダラにとっての貴様は最愛の弟を殺した人間。そのマダラがお前の血縁であるトバリを娶るのは凹凸ハマって帳尻も合うのではないか?」
「兄者のたまにサイコパスなとこほんと嫌い」
「んな!? さ、サイコパス!?」
「それはすまなく思うにしろ、あやつもワシの息子を死に追いやっとるからそれで相殺されて良いはずだ。第一ワシの因果がトバリに報いるのは理不尽も甚だしい」
「理不尽というか、トバリ自身がそれで良いと言っとるんじゃがのう」
「ワシはトバリに幸せになって欲しい」
「今、マダラと一緒で至極幸せそうじゃがのう」
「普通の男と…せめてワシと互角程度の強さを持ちトバリと並んで釣り合いが取れるのは当然として、寂しい幼少期を送ってきただろうトバリを精神的に包み込んで何よりも妻子を大事にするばかりか妻子が肩身の狭い思いをしないよう心配りの出来る立派で大人びた普通の男と……そういう普通の男と幸せになってほしい。そして叶うなら、ひ孫はトバリに良く似た男が良い」
「アッハッハ、普通の要素が何一つない」
「笑うな。ワシはごく真面目に考えた。トバリはまだ若い」
「うむ、そうじゃな」
「そして忍として優秀だ。頭も良く、出過ぎない。寛容かつ有能な人材は稀だろう」
「確かに、優秀な人間は得てして気の強いところがあるかも知らん。猿飛もあれで主張するタイプだしの。ああ、お前の気に入りの……カガミが大人しいタイプだったか」
「なおかつ可憐だ」
「単に貴様の好みぞ。黒目黒髪の大人しい女が好きなのは昔からちぃーとも変わらん」
「トバリは誰の目から見ても可愛い。そんなトバリが嫁ぐとなればそれ相応の男でなければ困る」
「まあ、ワシはそもそも生前から可愛く思っておったから、その進退に全く関心がないでもないが……貴様は寧ろ嫌ってたじゃろ。血の繋がりが判明しただけで、そうも変わるものか?」
「……嫌っていたわけではない。マダラについて回ってるのが嫌だったんだ」
「どういうことぞ」
「まだ幼いばかりか、容姿からも明らかに千手一族の人間だろうにうちは一族に肩入れして、マダラについて回って細々としたことを取りなしてるから……ワシが話掛けてもマダラさまがマダラさまがとそそくさと消えてしまうし、マダラのところで下働きなんぞしているより、アカデミーでちゃんと教育を受けて木ノ葉隠れの忍として自立したほうが良いと何度も話したのに『マダラ様がお許しになりませんので』と、だからそのマダラと手を切って自立しろと何度も……!」
「なるほど、貴様が避けてたのではなくトバリが避けてたのじゃな」
「もしかすると……ワシはトバリに嫌われてるのだろうか?」
「正直ワシ的にも鬱陶しいから、有りえなくはない」
「トバリが……洗濯ものをな……ワシのと分けて洗うんだ」
「あ~……あるのう。ツナもワシが洗濯物に触っただけですんごいキレて……ワシとしてはなんかちょっと暇だし、毎度毎度コハルたちの仕事の邪魔をするわけにもいかんし、アカデミーに顔を出せば子どもらをビビらすし、さりとて気安く話せるのも貴様ぐらいとなればほんと暇でのう」
「さり気なくワシと話すより一人で暇してるほうがマシって言うの止めろ」
「ツナは現役火影として忙しいし、夫も子もいないし、せめてワシが少しは家事を手伝おうかと思って洗濯物干してたら忘れ物か何かしたとかで帰ってきて、もうほんと憤怒って感じ」
「洗濯物を干しただけで……?」
「前に、十回目の結婚記念日が五影会談で潰れた時に家を追い出されたことがあったじゃろ」
「そんなこともあったな」
「あの時のミトと同じぐらい怖かった」
「下着か」
「ぬ?」
「分かったぞ、兄者。平然とツナの下着を干してたんだろう。それはキレる」
「うーん……どうだったかの。なんかもうツナに張り手食らわされた衝撃で全部吹っ飛んだ」
「それは駄目だな。デリカシーが無さすぎる。そのあたり、ワシは凄い気を遣うぞ」
「祖父と孫でそう気負う必要もなかろうに……貴様のとこと違って、ワシはツナのオシメも変えたことがあるし、膝の上で漏らされたことも、お年玉で金庫丸々強奪されたこともあるぞ」
「何ならワシは風呂入った後にお湯を張り直すからな」
「そこまで」
「当たり前だ……ただでさえ洗濯物を別々に洗ってるのに、ワシの後に風呂に入ったトバリが困ったような顔で『今度からお風呂の順番変えて貰って良いですか?』とか言って来たら死ぬわ」
「これ以上どうやって死ぬ気ぞ……そうか、女孫は気を遣うな」
「だが、まあしかし女孫はそのあたりが可愛いな。大きくなったな……という実感を得やすい」
「男はいつまで経ってもバカだからの~長男なんぞ三十近くになってもパンイチで居間におったわ。たまに真面目な顔で相談があると言うから心して聞いたら『おっパブに通ってたのが妻にバレた』とか言いよって……もうミトも嫁に肩入れしとるから、とりあえず息子側につくしかないし、夫婦喧嘩の巻き添えで散々な目にあったものぞ。貴様のとこはその点楽だったじゃろ」
「うちの息子共は外面は良かったからな」
「貴様そっくりぞ」
「ワシは内も外も良い。長男は出来が良かった分さっさと自立してしまったし、次男は兎に角要領が良くてまっったく親に頼らん子どもだった。出来が良くて手が掛からんと言えば聞こえがいいが、もちっと密にやり取りしたかったのが本音だな。自慢の息子たちではあったが」
「まあ、末のカンヌキは大分貴様べったりだったじゃろ」
「……アレは本当に育て方を間違えたというか、甘やかし過ぎた」
「貴様の甘やかすはイコールでスパルタ教育だからのう。何がいけないって、それがいけない」
「子どものころは父上父上とワシべったりだったのに、思春期になって急にマザコンを発症しおった。子どもというのは、訳が分からん。結局腰を据えて話し合うこともないまま死んでしまった」
「人の別れなど、そんなものぞ。真面目に考えると気が滅入ってくる」
「女孫は良い。可愛いし大人しいし、構ってると気が紛れる」
「暇だとつまらんことで鬱々とするからのう。ツナに思いっきり引っ叩かれると気が晴れるわ」
「若い頃は正直『里の繁栄のためなら自分の生き死になぞ如何でも良い。後継を守ることこそ最優先事項』と思ってたが、もう少し頓着するべきだったかも分からん」
「そうじゃのう……忍の神、火影と持て囃され、自分の夢である里のためにと懸命に生き抜いたと自負しておるが、子どもらにとっての父や祖父はワシ一人しかおらんからの」
「せめてトバリが四歳になるぐらいまでは生きていたかった」
「ワシはツナを嫁に出すぐらいまでかの……あんなに可愛いのに、何でまだ未婚なんじゃ」
「アルバムを見ると、小さくてコロコロしてて可愛いのに、いつも一人でいるのが胸に来る。息子たちや、ツナが四歳の頃は、屈託なく笑って、ワシや兄者のまわりをチョロチョロしてたものだ」
「ああ……賭博を覚えたのが四歳ごろのことぞ。ワシの膝の上に座ってのう……『大きくなったら一番博打が強い人と結婚するの』とか言うからワシも必死になって、結果身ぐるみ剥がれたが」
「はあ……ワシも四歳のトバリに『大きくなったらおじいさまと結婚するの』と言われたい」
「言われてない!!! ワシ言われてないぞ!?! いっっかいも言われてない!!!!」
「何故マダラ……何故……?」
「ツナ、おじいちゃん忍術ならそこそこ強いぞ……博打か……博打が強くなる忍術を開発すれば良かったのか……? もう忍の神とか如何でも良いから博打の神と呼ばれたかった」
「ワシのほうが若いし里抜けもしないし戦争の火種も作らないし二代目火影だし、ワシのほうがマダラよりずっとモテるはずだ。既婚か? 既婚だからいけないのか……? でも九十云歳で結婚歴ナシのほうが地雷率高いだろう。何がいけない……何がいけないんだトバリ……」
「博打なぞ所詮金を得るための手段に過ぎない。ならツナにいっぱいお金をあげたワシは博打以上の存在でなければ可笑しいのではないか……? 既にワシは博打以上の存在だった説の爆誕ぞ」
「家に帰って、トバリがいないともうまたマダラのところか……いつになったら目が覚めるのかソワソワする……息子たちが家にいない時はそう気になることもなかったのに」
「ワシそれ逆じゃの。家にいるとソワソワする……もう誰でも良いから結婚してくれ……家督とか死ぬほど如何でも良いから、ミトとツナそっくりのひ孫が欲しい。欲しいんじゃ」
「兄者、もう死んでる」
「そうだ。もう死んでた。ツナのウェディングドレス姿が見たいのう」
「ワシは白無垢が良い」
「貴様は遠からず見れるじゃろ。式場で成仏すると、その日の主役を食うから耐えるんじゃぞ」
「マダラとなぞ死んでも結婚させん」
「疾うに死んでる身で何を言う」
「マダラと結婚するぐらいならワシがトバリと結婚する。大蛇丸を使ってトバリを量産する」
「あ~それ良いのう。体外受精だったか。ワシもそっちでひ孫作る方向にシフトするかの……」
「孫の成長を見守りたかった」
「ワシが洗濯物干したの、まだツナ怒ってるかの……」
「あとで、トバリが好きそうな男性用コロンを買ってくか……」
「ついでに何か好きなものも買っていったら機嫌が取れるじゃろ。ワシもそうする」
「堆肥か……」
「トバリは堆肥を食べるのか?」
「兄者、ワシの孫を馬鹿にするのやめてくれない?」
「この流れで好きなものと言ったら食べ物じゃろうが! なんぞ堆肥って!」
「トバリは食物が好きじゃないんだ」
「それは貴様が知らんだけぞ。よくマダラが作った稲荷寿司を美味しそうに」
「あんな猥褻物をトバリにしゃぶらせろと言うのか!!!!」
「しゃぶる!?!」
「ワシはあのフォルムを見るだけで頭が痛くなってくる。どうせ『オレの股間の稲荷寿司も食べ頃だ』とか卑猥な言葉でトバリをかどわかしてるに違いない。殺す」
「ちょっと待って、息出来ない。死体なのに苦しい。マダラに次会った時ネタにして良い?」
「ワシの代わりに殺してくれるなら会っても良い」
「ええ……会うところからして貴様の許可が必要ぞ?」
「で、綱手様にトバリ。居酒屋を混沌に陥れて孫トークしてるお二人をいつ止めるの?」
「待って、待ってください。はたけ上忍待って、駄目です」
「いや流石に誰かもう止めるべきでしょ……半ば営業妨害だよ」
「……家に帰ったら若々しい姿の祖父がパンツ干してるんだぞ。咄嗟に手も出るだろう」
「出ませんよ」
「お前は男だから……! トバリなら分かるだろう!?」
「おじいさまに家事手伝いなぞさせるぐらいなら死にます……」
「本当にそれ、放っておいて欲しい。恥ずかしいし情けないしで、大分辛い」
「そんなに洗濯物のこと気にしてらしたなんて……私、ただおじいさまは死体で老廃物もないから……私と一緒に洗うと私の匂いが衣服について不快ではないかと思って……それだけなのに」
「何も知らずに、こっちは『ワシの着物からフローラルな香りがする』とか怪訝な顔するから分けて洗ってるだけなのに分けて洗ったらそれはそれで不満って如何いうことだ」
「私、堆肥以外にも好きなものあります」
「これは上司としてではなく対等な友人関係上の戯言として受け止めてもらいたいんだけど、うちはマダラから『オレの股間の稲荷寿司も食べ頃だ』って言われたことある?」
「ヴェッホ」
「あちゃー。大丈夫です?」
「言われたことありません! 綱手様、しっかりしてください」
「ック、大叔父様がクソ真面目な顔で『股間の稲荷寿司』とか無理にきまってるだろう」
「おじいさま……稲荷寿司は猥褻物ではありません……」
「こういうのがあるから、お酒って怖いネ」
花骸のこどもたち