七年語り – CHAMBER OF SECRETS
17 強欲の果ては、
昨日から、アンジェリーナはダリルを手放そうとしない。
ドラコと別れて談話室に戻ったダリルを待ちかまえていたのは、フレッドとジョージとアリシアとアンジェリーナだった。練習はおじゃんになったらしい。あんな騒動の後でクリーンにスポーツなど出来るはずもないが、あの騒動はどうやって解散に至ったのだろうとダリルは気になった。まさか「じゃあ帰るか」「おお」とかウッドとフリントが話したわけもあるまいし、一人ひとり抜けて行ったということだろうか。第一練習を続けるにしろ、ドラコとハリー、どちらのチームにもシーカーが存在していないのだから今一つ締まらないに決まっていた。
汚れたローブを手に談話室へよじ登るなり、ダリルはアンジェリーナに抱きしめられ、思い切り振りまわされた。
『如何してもっと早く言ってくれなかったんだよ!』
すっかり嫌われただろうと思ったのに、四人はダリルのことを全く嫌っていないらしかった。
フレッドとジョージは泣くダリルのことをからかったし、アンジェリーナは二人を叱りつけながらダリルに「なんで」「如何して」「馬鹿!」「泣かないで!」を繰り返していた。フレッドの調べによると一分間に少なくとも五回は話がループしているらしい。アリシアはダリルを慰めてくれたし、早速話を聞きつけたらしいリーもダリルをからかうより先に「馬っ鹿だなー! 俺達に先に言っとけば、こんなことにならなかったろ」とダリルの頭をスパーンと教科書で叩いた。勿論リーはアンジェリーナにしこたま足を踏みつけられ、「私めの馴れ馴れしい態度、真に申し訳ありません。淑女の頭を本で叩いたことを紳士として深く反省しております」と二十回言っても二人に許されなかった。いつも食事の時などは六人で固まって行動するわけだが、土曜日は昼食も夕食も男女に分かれて食べた。
何はともあれ五人は概ねいつも通りの態度でダリルに接してくれたし、誰もダリルをスクイブだと馬鹿にしたり、下に見ようとはしなかった。リーの言うとおりだとダリルは思った。もっと早くに、五人に打ち明けておくべきだった……そう思ってはメソメソするので、フレッドとジョージはダリルのことを「鼻たれ泣き虫」と言ってからかった。普通に歩いているだけだったのに、二人がそうダリルをからかった瞬間、偶然そこを通りがかったスネイプが三人から十五点減点した。ある意味これはダリルに良い効果をもたらした。それまで事あるごとにメソメソ泣いていたダリルだったが、あんまりにスネイプが理不尽なので、悲しみよりも憤りのほうが強くなったのだ。
ロンのナメクジは昼食頃には一先ず落ち着いたらしい。アンジェリーナとアリシアがリーを責め詰り「レディーを本で叩くような野蛮人とは一緒にいれない」と皿やフォークで男性陣との間に柵を作っているのを見ていると、不意に内臓が絞り出された。否、ハーマイオニーがダリルに抱きついていた。「貴女って――貴女ったら、ほんとに馬鹿ね!」そう言うなり、そのまま前後にガクガクと揺さぶった。「あんなこと言って! 本当に馬鹿だわ!」スリザリン生がダリルのほうを見てクスクス笑うのを聞き、ハーマイオニーがわっと泣き出した。
ハーマイオニーに殺されるようなことも、殺したくなるほど感激させるようなこともした覚えがないダリルは、何が何だかよくわからないでいた。ダリルは「あんなこと」が何を指すのか考えるよりも先に、自分の死期が迫っているのを感じていた。
ダリルがぐったりした頃、ようやっとアンジェリーナとアリシアがダリルを助けてくれた。「ハーマイオニー。私達、君との間に柵を作るのにもう材料がないんだ」二人の向こう側で、フレッドとジョージとリ―が舌を突き出しているのが見えた。「何が淑女だ。チビを本で叩いたからって、縮む背もない癖に。逆に伸びるかもしれない」ダリルは吹き出したが、アンジェリーナとアリシアは全く笑っていなかった。
『私、貴女が――貴女の父親がお金を積んだからホグワーツに入れたなんて思ってないわ』
五人が再び口論を始めた瞬間、ハーマイオニーが涙を拭いながら言った。
『私は、まだ貴女の友達でいて良いのかしら?』
ハーマイオニーはその台詞を聞くや否や、自分の骨を折る気なのだろうかとダリルが恐れたぐらい強く、全力でダリルを抱きしめた。アンジェリーナとアリシアが別の事へ夢中になっていて、ちっとも助けてくれない。ダリルは仕方なくハリーとロンのほうへ助けを求めた。しかし二人は何事かボソボソ話しては深いため息をつくばかりで、応じてくれない。「ああ!」ハーマイオニーが嘆いた。ダリルも嘆いた。ああ――なんで、こんなに、ハーマイオニーはすぐに感動してしまうのだろう。そして何故、感動すると、力持ちになるのだろう。「私、絶対に貴女が魔法を使えるようにしてみせるわ!」ちっちゃいマクゴナガル教授は、ダリルを殺しかけながら、キッパリとそう言った。
そうしてからぱっとダリルを縊り殺す手を緩めて「あと貴女、“魔力の無い人間ってね、呪文すら簡単に覚えられないのよ”の続きを私に教えてくれなきゃ」ときらきらした視線をダリルに注いだ。手助けすると言ったのは、自分のことが心配とか、感動したからとか、そんなことよりも単なる知的好奇心からの台詞なのではなかろうか。「私、どうしてマグルは魔法が使えないのかしらってずっと思っていたのよ」ダリルは自分がハーマイオニーの知的欲求を満たすためのモルモット的位置づけにあることを理解した。ダリルはハーマイオニーの尋問を避けるために、「魔力についてのささやかな思い付き」を差し出さなくてはならなかった。
アンジェリーナとハーマイオニーの間でぐいぐい引っ張られていたダリルは、自分の恩師たる論文を貢ぐことにより、ステレオでアンジェリーナの説教を聞けるようになった。貢がないでいたほうが良かったかもしれないと、ダリルはちょっと思った。
『スリザリン生の陰口とアンジェリーナの説教、どっちが辛い?』
ジョージが真剣な顔で聞いてきたので、ダリルは真剣に悩んだ結果、「どっちも」と言った。それからアンジェリーナは一分間に一度しか「なんで」「如何して」「馬鹿!」「泣かないで!」を繰り返さなくなった。
その夜、ダリルはアンジェリーナと一緒に寝た。何しろアンジェリーナが「私のいないところでダリルが皆に馬鹿にされて泣いたら、如何する!」と主張して止まなかったのである。アンジェリーナが面倒見が良い事は勿論知っていたが、ここまで――若干鬱陶しいと感じるほど――自分を案じてくれることに、ダリルは感動した。アンジェリーナが寝静まってから。
アンジェリーナはグリフィンドール寮生がダリルを馬鹿にすると思っているのか、それともスリザリン寮生が窓をよじ登って、わざわざダリルの部屋にまで悪口を言いに来ると思い込んでいるのか、どちらかは分からないが、少なくとも前者については心配することはなかった。
ハッフルパフ寮生やレイブンクロー寮生に至るまでダリルを見てヒソヒソ話をしていたからには、勿論グリフィンドール寮の生徒もダリルのことを良く思わないだろうとダリルは覚悟していた。しかしグリフィンドール寮生は誰もダリルのことを馬鹿にしたりはしなかった。
グリフィンドール寮生にとっては、ダリルが何故グリフィンドールに入ったのか判明したことのほうが重要らしかった。
『その内使えるようになるさ』
『それでいつもあんなに色々課題出されてるのね』
『僕の母さんも十五六になるまで、全然魔法が使えなかったって言ってるよ。何か切っ掛けがあったか聞こうか?』
今まで一度も喋ったことのない上級生までもが好意的な励まし、慰めをくれた。
何か裏でもあるのだろうかとダリルは身構えたが、彼らは本当に親切だった。勿論ちょっとは見下されてるなとか、そう言う風に感じることもあったが、誹謗中傷よりずっと良い。五人が普段通り接してくれたこともあり、ダリルは彼らの親切を素直に受け取ることが出来た。
ロンもダリルが魔法を使えないと知って、馬鹿にしたりはしなかった。「もっと早く言ってくれれば、マルフォイの同類なんじゃないかって疑わなかったのに」口を尖らせるロンの頭を無理やり押さえつけて、「昨日は有り難うございました! って、素直に言えないの?」とハーマイオニーが顔を顰めた。「知らなかったね! 感謝するのに相手を縊り殺そうとするのが君の言うマナーってわけだ!」自分へ無理やり頭を下げさせられながらロンが呻いたのに、ダリルは壁を叩いて、笑いだした。ハリーも横でにやにや笑っている。
「僕ら、もっと早く仲良くなれたよね」
ハリーの台詞に、ダリルは笑った。もっと早く――そうしたら、自分は三人と色んな秘密を分かち合っていたのだろうか。三人と話している間も、アンジェリーナはダリルのローブをがっちり掴んでいる。フレッドとジョージは遠くからダリルを冷やかしているし、リーは「ハリーがダリルに告白したぞ!」と叫んでいた(ダリルは笑いながら靴を片方脱ぎ、リー目掛けて投げつけた。ハリーが変な顔をしてダリルの行動を眺めていた)。アリシアはダリルの言動を見てケラケラ笑っている。ダリルが秘密を分かち合う相手は、ハリー達ではない。
「今からではご不満?」
「君、真っ当に話せるんだね」今気付いたとでも言いたげな口ぶりでハリーが返すので、ダリルは苦笑した。「友達と話すのに、一々赤面して居られないもの」ハリーもロンもダリルの言葉を否定しなかった。「そりゃそうだ」自然に受け入れて、肩を竦める。
やがて三人はどこかへ行き、ダリルは自分の親友達の集うところへ戻って行った。
「良かったな、ハリーと仲良くなれて」
「もう片方の靴で殴られたいの?」
ダリルがピシャリと言い放つと、リーが黙った。傍らに落ちている靴を拾って履く。
「でもロンの言うとおりだぜ」
ソファに深く身を埋めながら、フレッドが呟いた。ジョージが続きを口にする。「もうちょっと早く言ってくれりゃ、俺が家からクイックスペルの申込用紙を持ってきてやれたのに……」アンジェリーナがダリルのローブから手を離し、フレッドの頬を思い切り抓った。
「君らがそんなことばっかり言うから、ダリルが私たちにまで何も言ってくれなかったんだろ」
「俺じゃない! ジョージだ!!」
必死に反論するフレッドに、ジョージがにやにや笑っていた。
「フレッド、楽しそうね」ダリルは呆れたように呟いた。
「馬鹿、今日はあっちがフレッドだ」ジョージがぶすっとフレッドのほうを指した。ダリルには区別がつかない。
「貴方達の言う事で一番当てにならない御忠告よね。今度目印つけておこうかしら」
ジョージの訂正にダリルはため息をつく。相変わらず、二人の見分けはつかなかった。それにちょっと前まではダリルが間違えると手を打って喜んでいた二人が、最近は顰めつらで間違いを正す。新しいジョークか本気の台詞か判別出来ないダリルは、その訂正を頭から信じる気になっていなかった。ジョージはますます膨れていた。如何すればご機嫌を直してくれるか分からなかったので、ダリルはジョージを無視して、フレッドとぎゃあぎゃあ騒いでいるアンジェリーナのほうに近寄った。
「全くこの人達と来たら……」
「待った! 俺は何もしてない!!」“達”に含められていると感じたリーが声を荒げる。
ダリルはふーっとため息をついて、アンジェリーナに抱きついた。「有り難う、アンジェリーナ。でも、良いのよ」良くないと言いたそうな顔でいるアンジェリーナに、ダリルはにっこり笑って見せた。
「フレッド達の言うとおりだもの。こっち、フレッド?」小首を傾げるとフレッドとジョージが同時に「そうだよ!」と叫んだ。アリシアがちょっと変な顔をする。「じゃあそう信じることにしたわ。叩かれたり小突かれたりしたことは、まだちょっと、思い出すとイラっとするけど」笑顔で言うと、男三人が神妙な顔をした。アンジェリーナとアリシアはにやにや笑っている。「だけど、本当に皆の言うとおりだもの」
本当に、もっと早く五人へ言っていれば良かったのかもしれない。
「勿論、皆が私の事馬鹿にするかもとか思ってたわけじゃないのよ。ただね、私、魔法が使えなくって、自分は役立たずなんだってずっと思って来たから――本当にそうなのだけれど、皆から何も出来ないんだなって親切にされたくなかったの」
ダリルが言うと、アンジェリーナがぺちんとダリルを叩いた。
痛くはなかったが、手をあげられるとは思ってなかったので、ダリルは目を見開いた。アンジェリーナを見つめる。
「馬鹿だな! 役立たずなんかじゃないよ……」アンジェリーナは何事か言いたそうにしていたが、「本当に、馬鹿だ!」もやもやを上手く言葉に出来ないようで、昨日から千回は浴びせられただろう優しい罵倒を繰り返す。
アリシアがにやっと笑った。しっかり者のアンジェリーナがもごもごしているのと、ダリルがそれを見てきょとんとしているのが可笑しいのだろう。「ダリルがフレッドとジョージと仲良くなるまで、こんなに大勢で始終一緒にいたりしなかった」
アンジェリーナが言いたかっただろう言葉をアリシアが引き継いで喋る。
ダリルがフレッドとジョージと仲良くなるまで、五人は殆ど一緒にいることはなかった。リーは学校のスピーカーとして、色々なところを飛び回っているし、アンジェリーナとアリシアは同じクィディッチ選手同士フレッドとジョージとは仲が良かったが、性別の違いからずっと一緒に居たいとは然程思っていなかった。何よりもフレッドとジョージは一見酷くフレンドリーに見えるものの、誰かが二人の間に入ろうとすると露骨なぐらい嫌がった。だから五人は、集まればわいわい話はするものの、集団行動はしなかった。クィディッチの時はアンジェリーナとアリシア、フレッド、ジョージで話し、悪戯をする時はリーとフレッドとジョージだけで行い、その時々によってバラけていて、常に誰かが抜けてたり、全員揃っていればすぐに解散してしまったり、今一つ決め手に欠けるような――しかしそれはそれでサバサバした付き合いをしていると五人は思っていた。それが、ダリルがフレッドとジョージの間に無理やり割り込んでから、少し変わった。
ダリルは二人のことを個として見たし、二人がそれを嫌がっても躊躇しなかった。幼いが故の強引さで、ダリルはフレッドとジョージの間に割り込むことへ成功した。二人が女の友達もいた方が良いだろうという事でアンジェリーナとアリシアを呼びよせ、今度は女が多くなったからとリーを引きずりこんだ。ダリルは確かに時々無神経なことを言ったり、人の親切を親切と思わなかったり、自分を卑下するなどの短所が多く目立ったものの、人と人を結びつけるという素晴らしい長所を持っている。
駄目なものほど手を焼きたくなるものだし、それにダリルは素晴らしい緩衝材だった。五人の内の誰かが些細なことで、真剣に喧嘩し始めると、必ずダリルは分けのわからないことでケラケラ笑ったり、ドジをやらかして、皆を呆れさせる。そうなればもうダリルのことを叱ったり、問いただすほうへ意識が逸れてしまい、怒りを思い出した頃には「全くもって下らない」と冷静な気持ちになれた。
「変に頭が硬くて、魔法が使えない後輩でも居れば役立つってこと」
リーが背後から、ダリルの髪を引っ張った。
ブルーグレイの瞳から、透明な滴がぽたっと一粒落ちる。
「なーかしたー、なーかしたー」
フレッドとジョージが笑いながらリーを責め、リーは「そんなに痛かったのかよ!」とオロオロしながらダリルを笑わせようとし、アンジェリーナとアリシアは四人のやり取りを見てクスクス笑っていた。
ダリルはリーが自分のドレッドヘアーを持ち上げて「ハグリッドのヒゲ」とか言って笑わそうとするのを、必死で耐えていたが、皆が笑っているので耐えきれなくなってしまった。アンジェリーナに寄りかかって笑いながら、ダリルは自分が恵まれていることを自覚した。
五人と一緒にいると、ダリルは父親やダンブルドアの予言を忘れることが出来た。この日常がずっと続くのだと思えた。
自分を押し殺さなくて良い。自分を卑下しなくて良い。求めている無償のものがグリフィンドールにはあった。ここで生きていくことが出来るだろうか。ここで生きていきたい。光のなかでなら、ダリルはありのまま生きていける。
「私ね」
ダリルは小さな声で呟いた。
「如何して魔法が使えないんだろう。如何してお父様やお母様、ドラコの気に入るように出来ないんだろうってずっと思って来たの」
か細く喘ぎながら、言葉を続ける。
「自分は本当に駄目だなっていつも思う。我儘で、甘ったれで、凄く優柔不断。些細なことで決意が揺らぐわ。グリフィンドールに入った時も、ずっと後悔してた――自分で選んだのにね。自分が魔法を使えないから、だから駄目なんだってずっと悔やんで、魔法さえ使えたら、そうしたらドラコと仲違いしたりすることもなく、お父様にいつ怒られるかビクビクしないで良い、誰かから嗤われないで済むってずっと思っていたの。だからずっと隠し通そうって思ったわ。誰にも、自分がスクイブだって知られたくなかった。人に嗤われたくない。これ以上家名に泥を塗りたくない。いつも誰かに憧れてた。ハリーみたいに人を引きつける何かがあったら……ハーマイオニーみたいに賢かったら、そうしたら自分は幸福だったろうって思っていて、何かを頑張ろうともしないで、もしものことばっかり考えてた」
魔法が使えないから駄目なのではない。自分が何かしようとしなかった。いつも誰かの手を求めていた。手が差しだされないから駄目なんだと思っていた。違った。差し出された手に気付こうとしなかったのは自分で、だから駄目だった。
「今ね、皆といて幸せだから、過去の自分を許せる気がするの。駄目じゃなかったら、きっと今、皆と一緒に居れなかっただろうから……」
醜い自分。汚い自分。欲に塗れていて、役立たずな子供。愚かにも感情を爆発させて、賢く居ることが出来ない。なのに皆受け容れてくれる。大丈夫だと慰めてくれる。馬鹿だなと笑って、許してくれる。
「バーカ」
珍しく、ダリルを抱き寄せたのはフレッドだった。ダリルはクスクス笑って、フレッドの赤毛をぐしゃぐしゃにした。
「さっきと全然変わってない。君への、今度のクリスマスプレゼントは櫛で決まりだな」
アンジェリーナがにやっと笑ったのに、フレッドが膨れて見せる。ダリルも大きな口を開けて、誰の目を気にするでもなく笑った。
隠すことで愛されたいと望み、相手の全てを愛したいと望むダリルはアンバランスだ。ルシウスがダリルへ自分達側の人間なのだという理由がそこにある。ダリルの中には確かにスリザリン特有の残忍さや、他を除外したがる潔癖さが存在する。
それでも望んだのはグリフィンドールだった。
どんなに欲が深くとも、ここでならそれを許せる気がした。ずっと幸福で居られる気がした。
七年語り – CHAMBER OF SECRETS