七年語り – EXTRA STORY
記憶と少女
「貴方自身の容姿が整っているのだから当然のことかもしれないけど、トムの歴代彼女って凄く綺麗よね」
「君が僕のことを如何思ってるかは知らないけど、僕の美的感覚は常人と殆ど同じだよ」
「別に、貴方の好みが変わってるなんて言ってないじゃない」
「そうかな? そう言いたげな顔をしてたのに、自覚がないとは流石ダリルだね」
「自分の顔のことぐらい把握してます」
「鼻の位置が少しずれてるのも?」
「うそっ、そ、――もう! またからかったのね」
「君が馬鹿なだけだろ」
「そうですか。全くもう、貴方の悪質なことと言ったら……」
「君にだけだよ――どうしたんだい」
「そうね、貴方は彼女達の前では完璧な紳士でしたもの、そうでしょうとも」
「レディー扱いしてあげようか?」
「結構よ」
「そう?」
「貴方になんてレディー扱いされたくないわ」
「……言っておくけど、別に彼女達が特別だったから紳士然としていたんじゃない。寧ろ、逆だよ」
「ああ、トム! 特別扱いしてくれて有難う! とでも言うと思うの?」
「まさか」
「然程呆けていらっしゃらないようで安心したわ。貴方は本当に、ご自分の歪みを少しは理解するよう尽力したほうが良いのでなくて?」
「それなりには分かっているつもりだよ」
「だったら、少しは貴方を愛した人々の気持ちを汲むべきよ」
「きちんと合意の上で別れたのに、まるで僕が彼女達を踏みにじったように言うね。それに彼女達だって闇の帝王の隣に立つ度胸なんてない単なる女たちだ。互いのためを思った結果、その選択が一番有益だと判断したから別れた――それだけのことだろう」
「彼女達には貴方の隣に立つに十分な度胸があったはずだし、その整った仮面の下がどれ程醜かろうと貴方から離れなかったと思うわ」
「見てきたかのようなことを……所詮起こった事を見るしか出来ない君と、実際その場にいた僕、どっちが」
「でも、私は人に焦がれる気持ちを知っているもの」
「またあのウスノロの話? そんなものはまやかしだよ」
「セドリックは関係ないわ。私と貴方、二人の話よ」
「貴方という悪に出会って、幸か不幸か貴方の隣に立っている私という偶然を必然にする話」
「――君は本当に馬鹿げたことで、その空っぽな頭を苦しめるね」
「失礼ね。貴方こそ、いつになったらその饒舌を仕舞おうって気になるの?」
「さあね。饒舌は、少なくとも答えの見える問いで悩むよりはマシなことだ」
「答えの見える問い、って……」
「ダリル、君というちっぽけな子供が偉大なる闇の帝王の隣に立つことを幸い以外の言葉では言い表せないんだよ」
七年語り – EXTRA STORY