七年語り – EXTRA STORY
惚れ薬の弊害
「本当の本当に部屋からは出ませんからね」
「俺だって君をぶら下げて歩く趣味はないさ。チェッ、フレッドの奴、作るだけ作ってフラフラ出てっちまうんだから」
「アンジェリーナで試せば良いのに、これ全然効かないわ。私、魔法薬に耐性があるのよ。基本的に今市場に出回ってる惚れ薬は、人体に害がないよう効力を抑えてあるでしょう。これだって強いほうだったと思うけど、少し眠いかな程度ね」
「俺たちとしても君がベロンベロンになっちまわないほうが良いんだ。マルフォイ家のお嬢様を傷物にしたとかで訴えられるのはごめんだね」
「あら、ジョージ。貴方が紳士でいてくだされば、ウィゼンガモットでブラインドデートする必要なんてないのよ。やっぱり駄目ね、経口摂取は効きにくいみたい。塗布は……今回は経皮摂取は良いのよね? ねえ、経口でなくちゃ効果が出ないよう制限を掛けた方がいいわ。ただでさえ強い薬にするつもりなんでしょう」
「女に襲われたってケースもあるんだぜ。言われなくても分かってるさ、だからこそ君に呑んでもらわなくっちゃ――経皮摂取は、仕方ない。ある程度効力を調整した後で、自分達でテストするさ。じゃ、今度は僕らの作ったほうを飲んでくれ。一番左の、四分の一に希釈した奴」
「卑しくもクィディッチ選手を押し倒しかねないと思われているなんて、光栄ですこと。飲むわよ」
「どうぞ、お嬢様」
「……無味無臭なのね。丸っきり水だわ。何か、もっと惚れ薬だと分かりやすい色とか臭いを付けた方が良いんじゃない」
「水に近い味と色を目標にしてるんだ。その方が混入させやすいしな」
「魔法不適正使用取締局が大喜びでドアベルを鳴らすでしょうね。一定期間置くと脱色してしまうとか何とか警告文をつけるにしろ、とりあえず表向きは“ジョークグッズ”から逸脱しないほうが良いわ」
「まるで俺たちが爆弾や重火器でも作ってるかのような口ぶりじゃないか。惚れ薬は如何だい」
「今のところ、やっぱり少し眠いぐらい。貴方達のジョークは、一般の感性で言う戦争に近いわ」
「駄目だな。皮肉じゃなく愛を囁いてくれよ」
「でも今のとこ、一番薄い奴でも市販の惚れ薬と同等の効力みたい。次、真ん中のね?」
「ああ、それは水で半分薄めた奴。如何?」
「ん……うん。ジョージ、解毒薬は出来てるのよね? あの、ジョージ。少し離れててくれない。これ、さっきのより全然酷いわ。その、一番右のって原液でしょう」
「うん、この調子じゃあ飲まないほうが良いな。やっぱり薄めないと駄目か」
「ジョージ」
「待った。この解毒薬、古い奴だ。フレッドの奴、あれほど整理整頓は徹底しとけって言っといたのに――」
「隣に座って良い?」
「解毒薬を飲んでからならね。ほら、飲みなよ。魔法薬に耐性があってこれなんだから、半分よりもっと薄めろってことか。ダリル、しっかりしろ」
「なによ、ジョージが飲ませたんじゃない」
「見ず知らずの奴に飲ませるわけにもいかないし、俺達にしたって同じ顔した男に押し倒されるよりはよっぽどマシだからだよ。とりあえず大体の目安は分かったから、もう解毒薬を飲んでくれ」
「口移し」
「ああ、解毒薬を飲んだ後なら何でも言う事聞いてやる」
「膝に座らないと、飲めないわ」
「ダリル」
「……飲めない」
「分かった。分かった、膝に座るのは良い」
「寄りかかるのも?」
「後でぎゃーすか喚かないならね。まあ、喚くだろうけど」
「ふうん……ジョージって細そうに見えるけど、案外逞しいのね」
「そりゃ、クィディッチ選手だし、君と違って男だからね。……本当に、こうまで人を空しい気持ちにさせるとは思いもよらなかったよ。こりゃリピーターはつかないだろうな」
「よいしょ」
「早く、解毒薬を飲んでくれるかい」
「もうちょっと」
「この惚れ薬、いっそ思いっきり強くしたほうが良いかもな。もしくは錯乱の効果も入れて、君の言う通り“完全に惚れ薬だと分かる仕様”を心掛けるよ」
「なんで、顔を背けるのよ」
「……君に好きな奴がいるからだよ。そのまま寝ちまう前に、一口で良いから飲んでくれ。あんまり俺を困らせるな」
「ジョージ、困るの? それって面白いわね。いつも、後始末で困らされるのは私なのに」
「君はフィルチを百人束ねたより性質が悪い。さあ、ダリル」
「詰まらないの」
「あー、良い子だ。そのまま全部飲みほしてくれりゃ、バタービールを奢ってやる」
七年語り – EXTRA STORY