七年語り – CHAMBER OF SECRETS
27 不運な男
夢と眠りの狭間で二人は逢瀬を繰り返す。
いつもの小さな部屋のなか、ヴォルデモートは本のページを捲り、ダリルも膝の上に本を載せている。相変わらずちっとも理解出来ない。まだ序文を読んでいる途中といったところだ。しかしダリルの関心が向いているのはコムズカシイ序文などではなく、目の前にいる男の思考だ。本など読んでいる場合ではないとダリルは思っていたが、ヴォルデモートはそう思わないらしい。
人を石にしておいて、よく平気な神経で本など……そこまで考えて難しい顔をする。否、土曜の夜もこうして二人会っていたのだから、彼自身が何か出来たはずはない、と、思う。しかしヴォルデモート以外にスリザリンの継承者として動ける人間がいるだろうか。
ダリルは思い切って口を開いた。
「イエスでありノーなのだという台詞について、詳しく教えて頂戴」
「もう少し頭を使ったら如何だい」
視線すら上げず、ヴォルデモートはキッパリ返した。実際にその通りなので、ダリルは何も言えなくなってしまった。焦っているのだ。
ジニーは面識のある相手が被害にあったことで更に落ち込んでしまったし、ヒトが襲われたということで校内には不安が満ち始め、もう誰もフィルチを嫌う誰かの悪戯だなどと言うものはいなかった。ダリルはこの沈んだ空気から解放されたいとも思ったし、何よりもセドリックに応えるためにさっさとこの事件の真相を知りたいと思うようになった。セドリックは純血だから襲われることはないだろうが、それでも表情は暗い。しかも、ハリーはミス・レターに「ポリジュース薬を作る為にスネイプの薬棚から材料を盗む」と打ち明けてきた。
心配事と悩み事がダリルの思考回路を埋める。幸いなのはフレッドとジョージとリーがいつも通り明るいことだろう。しかしその明るさでもってジニーを脅かして歩くので、これも手放しには喜べない。ハリーもロンもハーマイオニーも、ホグワーツを退学になりたいのではないかと思ってしまうような“破天荒”を次々に計画しているし、それでドラコを取り調べるだなどとはしゃいでいる。ダリルは自分の体が心配事で構成されているのではないかと怖くなった。相変わらずベアゾール石を食べるのは楽しくないし、そろそろお湯を浴びたい。
継承者に襲われるのは怖くないが、そう言う多くの理由から、ダリルもコリン・クリービーが襲われて以来焦りと心配とで暗くなっていた。……とはいえ、その焦りからヴォルデモートへことの真相について聞いてしまうというのも随分と間抜けな話だ。
膝の上の本を閉じて、ダリルはため息をついた。こうやってコムズカシイ本を読んでいるだけなら、ここに来る意味はない。何か事件の真相に纏わる手掛かりの一つでもないかと部屋を見渡せば、ヴォルデモートが赤い視線をダリルに注いでいるのに気付いた。
「おいで」
すらりとした指がダリルに差し出される。
差し出されたからと言って、自分からその手に触れれば顔を顰めることをダリルは知っていた。
ダリルは本を今まで自分が座っていた木箱の上に置き、立ち上がる。一歩近づくだけでヴォルデモートとの距離が失せた。ヴォルデモートがダリルの手を取って、顔に近づける。「――魔力が戻ってきたみたいだね」ヴォルデモートの吐息が手の甲をくすぐった。
戸惑いに支配されていたダリルの顔が少し明るくなる。それを見上げて、ヴォルデモートがくすりと笑った。
「それとも、あのトロールそっくりな男の匂いがするとでも言った方が良かった?」
あの日レディは連れていなかったはずなのに――相変わらずこの男が何故自分の行動の全てを知っているのか、ダリルにはさっぱり分からなかった。ヴォルデモートの揶揄を受けて、ダリルの容貌から明るさはすっかり失せたが、悪い事ばかりではない。揶揄をする気になったということは、ダリルと話をする気になったということだ。少しずつ聞いて、それで朝になったら自分で考えてみれば良い。
ヴォルデモートが髪を引くので、ダリルは膝をついた。恐らくダリルが自分より高い目線でいるのが気に食わないのだろう。いつどのタイミングでこの男の幼稚さが露出するのか、ダリルは……いや、きっと誰も分からない。ヴォルデモートの赤い目がダリルを見下ろす。
「コリン・クリービーを襲ったのは、マグル生まれだから?」
「さあ、知らないね」
ヴォルデモートはダリルの手を離すと、まだ薄らと己の手の跡が残る首へ触れた。
「嘘はつかないって言ったわ。知らないなんて、そんなはずないでしょう」水よりも冷たい指が首に絡む感触に身を捩り、ダリルはちょっと前の約束を持ち出した。約束というよりは気まぐれだったのかもしれない――そう思った瞬間ヴォルデモートが何でもない風に言う。「まず、その台詞が真実である証拠がどこにある」ダリルは顔を歪めた。この、詐欺師。そう罵りたいのを堪える。堪え切れない。
「……嘘つき」無意味な罵倒だとは自覚していたが、少しぐらい言ってやりたかった。
「白痴と思われるよりはずっとマシだね」ヴォルデモートはダリルの罵りを鼻で笑い、ダリルの首を軽く絞める。
「セドリックは、白痴じゃないわ」この人は誰彼構わず馬鹿にしたいだけなのだと、ずっと無視してきたが、とうとう反応してしまった。
「へえ、君みたいな底なしの馬鹿からはそう見えるのか」自分で自分の言ったことが面白いのか、それともついにダリルが反応してしまったのが可笑しいのか、クスクス笑いだす。ダリルはヴォルデモートを睨んだ。
「その底なしの馬鹿を利用しなければならないからと、殺す事も出来ない不運な人がいるんですってね」
冷たい声音で皮肉ってやれば、ヴォルデモートの顔から笑みが消える。今の台詞よりも凍った視線でダリルを見つめていた。ダリルはふいと視線を逸らす。冷や汗が僅かに体を湿らせたが、彼を本気で怒らせることさえしなければ殺されはしない。
「この部屋は貴方の家のどこか?」
ダリルはヴォルデモートの不機嫌になど気が付いていないという風を装い、話題を変えた。
「それを知って如何する?」ヴォルデモートはダリルの首を解放し、膝の上の本のページを捲る。「ただでさえ容量が少ない脳味噌に、そんな無駄な情報ばかり詰め込もうとするから、一週間かけてもそれを読み終われないんだよ」
嘲笑う響きでそう言うと、ダリルがきょとんとヴォルデモートを見上げてから、クスクスと笑い始めた。唐突な笑みにヴォルデモートの思考が止まる。ダリルが己を嫌っているのは明白であり、そんな相手の前で、一体何を笑うことがあると言うのだろう。
「……気でも違ったのかい」揶揄のはずが、毒気が抜けてしまった。
ヴォルデモートのその呆れた言い方さえ面白くて、ダリルは口元を手で覆いながら声を立てて笑った。この邪悪な魔法使いは如何して自分の本を読む速度を測っているのだろう。きっと、何故そんなに読むのが遅いのだろうとか不思議なのに違いない。自分があっという間に読めるから、自分の賢さを客観的に見ることが出来ないから――そう思うとダリルは可笑しくて堪らなかった。
ふふと華奢な笑みで部屋を明るくしながら、ダリルはようよう言葉を紡ぎだす。
「四日でこれが読めるなら、今頃私は魔法省大臣になってるわ!」ダリルがそう言ってもまだヴォルデモートは腑に落ちないらしかった。鳩が豆鉄砲食らったような顔をしているのが、またダリルを笑わせる。結局ダリルはそれから十分ほども笑い、ヴォルデモートはそれをじっと見ていた。何故ダリルが己の前で笑うのかという疑問への答えは出ず、またこれ以上考えてはいけないことのようにも思えた。
ダリルは無邪気に笑いながら、それでも目の前にいるのが誰かはきちんと分かっていた。そして勿体ないと強く思った。ヴォルデモートの望みがマグルせん滅以外のものへ向いたなら、何でも叶っただろう。魔法省大臣という役職ですら彼に相応しくはないと思わせるぐらいに、賢く、強い魔力を持つ魔法使いだ。きっとダンブルドアよりもずっと皆から尊敬される魔法使いにでもなれたに違いない。
それが何故、何が彼を純血思想に固執させたのか。
その疑問に至ったところで、ダリルの笑みが止まった。ふっと我に返り、慌ててヴォルデモートの機嫌を伺い見る。しかし不思議なことに、彼はまるで怒っている様子がなかった。それどころか、ダリルが今まで共に過ごしてきた時間の内で一番穏やかな顔をしていた。
「ここは」赤い目がどこか遠くを見つめる。「――ここは僕がホグワーツを卒業して、初めて得た自分だけの空間だった」
「初めて?」ダリルがオウム返しするのに、ヴォルデモートは言わなくても良い事を言ったと舌うちをする。しかしダリルはヴォルデモートの不機嫌を無視した。「貴方にも、そういえば学生時代があったのよね。きっと学年主席だったんでしょうね。こんなに賢いんですもの」
ダリルがにっこり笑った。ヴォルデモートはダリルの真意を探るようにブルーグレイの瞳を覗きこみ、そしてレジリメンスを心中に唱えて見る。頭に流れ込んでくるダリルの思考と台詞はリンクしていた。単なる好奇心。ヴォルデモートは呪文を終わらせる。
「それとも学校のテストなんて下らないと思っていたのかしら?」ダリルは小首を傾げて、問う。
ヴォルデモートは単なる暇つぶしだと己に言い聞かせた。この娘に自分の過去を知って、どうこうするという知性があるはずもない。
「面白くなかったのは確かだね」
ダリルがちょっと嬉しそうにした。揶揄や嫌味の一つもなく、ヴォルデモートとの会話が――それも雑談が成立するのは初めてだった。
「どんな学生だったの?」
率直すぎる問いかけへ、ヴォルデモートが嫌そうな顔をした。ダリルは口を尖らして、しょんぼりする。
「だって、どんな本にも貴方の学生時代については書いてないわ。学生名簿をちょっと漁ってみたけど、ヴォルデモートなんて名前もなかったし……」馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、ここまで馬鹿だとは思わなかった。ヴォルデモートの顔にはそうデカデカと書かれている。
「僕がホグワーツに在学していた証拠を消し忘れるとでも思っているなら、君の思考能力は救いようがない」
ため息を絡ませて零した台詞へダリルはきょとんとしていた。
勿論ダリルだって卒業者名簿のなかに「ヴォルデモート・スミス」とか載っていると思ったわけではない。それでも学生時代から優秀だったと言うのなら、そして現在の己が行っていることへの後ろめたさがないのなら、隠す必要はないのではないかと思った。
「何故隠すの?」
ブルーグレイの瞳がまっすぐヴォルデモートを見つめる。水鏡のような瞳に己の姿が映るのを見て、ヴォルデモートは視線を逸らした。
「人に好き勝手憶測されるのは好きじゃないんだ」
「だって貴方ってどんな質問にも答えないのだから、憶測するほかないでしょう」ダリルはケロリと口にした。
「如何してそうなる?」
ヴォルデモートの眉間にしわが寄る。理解出来ない思考だった。
何故知りたがるのか、何故問いたがるのか、ヴォルデモートには全く分からない。何故他者のことを知りたがるのか。強者のことを知ることが己の身を守ることに繋がるというのなら、まだ分かる。しかしダリルは既に身の保証を得ているはずだ。これ以上何を欲しがるのか、ヴォルデモートには分からない。この会話の何がダリルの得になると言うのだ。分からない。気持ち悪い。理解出来ない。
「僕は自分より下の人間に僕について語られるのが堪らなく嫌だし、知られたくない」不機嫌を募らせた響きで言い捨てる。
「でも、貴方より凄い魔法使いってそうそういないわ」
静かにダリルがそう返した台詞は丸きりヴォルデモートの予想外であったが、もう驚いたりはしなかった。この生き物はヴォルデモートの理解の範疇を超えている。微生物に等しいような気すらしたし、全くもって愚かと言うほかない言動を繰り返す。
気味の悪い生き物。いつだって自分を揺らがせるような衝撃を――いつだって、そこまで考えて、ヴォルデモートの思考が記憶の海に沈む。人の目から見たものが多すぎて、自分自身の目で見たものがどれか分からない。
困惑を続けているとヴォルデモートの頬に温もりが触れた。背筋が粟立つ。ダリルが手を伸ばしてヴォルデモートの頬に手を寄りそわせていた。唇がゆるゆると動く、眉が切なげに寄せられ、おぞましい何かを湛えた瞳がヴォルデモートを映しだす。
「それって、寂しいのではない?」
ヴォルデモートの語るものは孤高ではなく孤独のようにダリルの耳には響いた。自分より下の存在は認められず、そして上の存在は己の意思を阻むものとして葬り去ろうとしている。それでもまだ、自分より下の存在と仲を深めることを拒むなら、まだ分かる。
語られることも、知られることも、関心を向けられることを全て拒むというのは異常だ。
そう思った瞬間、ダリルの思考に黒いものが流れ込む。暗くて、何も見えない。――トムがまたやらかしたのね! キイキイ騒ぐ女の声が聞こえる。不気味な子供! 帰ってこなければ良いのに――僕だって戻って来たくなんてなかった――変な奴、化け物だ。誰だってこんな子供を育てたいとは思わないだろうよ――僕だって、お前達みたいな に――ノイズ掛かった音が鼓膜を揺する。次に耳朶を震わせたのはノイズのない明確な拒絶だった。「僕に触るな」ヴォルデモートがその赤い瞳に憎悪を溜めて、ダリルを見つめていた。熱がダリルの手首を焼く。いや、ヴォルデモートがダリルの手首をきつく握っていた。鈍痛がダリルの顔を歪ませる。
ダリルはヴォルデモートの頬から手を遠ざけた。同時にヴォルデモートもダリルの手首から手を離す。
無理に触れ続けていたわけではないのに、不愉快だったんなら、自分で払いのけてしまえば良かったじゃない。やっと首の痣が引きそうだと思ったのに、今度は手首に痣が出来てしまった。ダリルはじくじく痛む手首が折れていないか確かめると、立ち上がって、自分が元座っていた木箱に戻っていった。ヴォルデモートが殺気を撒き散らしているので、少しでも遠ざかりたかったのだ。
ヴォルデモートは俯き、両手で顔を覆っている。彼がヴォルデモートでさえなければ手を差し伸べて、背を撫でさすってやりたかったが、そんなことをすれば今度こそ殺されてしまうだろう。ダリルはヴォルデモートが落ち着くまで口を噤むことにした。
『甘やかに人を誘うが、開けることは出来ず、越えることも出来ない』
一見して魅力的であり、容易に人を惹きつけることの出来るヴォルデモート。しかし彼が他人に心を開く事はなく、そして開きたいと望めば望むほど彼は遠ざかる。己よりも下の魔法使い達を見下し、道具としか思わないにも関わらず、己よりも実力が上の魔法使い達にも与さない。彼は世界一才能のある魔法使いだったから、きっと彼と同い年で彼よりも優秀な魔法使いが誰ひとりいないから……。
何故こんな人間が育つのだろう。ダリルは黙りこみ、己を落ち着かせることへ必死になるヴォルデモートを見つめた。才能があるというそれだけで――人はここまで他を拒絶出来るのだろうか。苦しいなら他人の腕に縋れば良い。それが例え己を嫌っていると思っていたとしても、人は極限の恐怖や苦悩と向き合った時、孤独ではいられないものだ。
『トムがまたやらかしたのね! 不気味な子供! 帰ってこなければ良いのに』
『変な奴、化け物だ。誰だってこんな子供を育てたいとは思わないだろうよ』
ダリルの瞳から一筋、涙が零れた。頬を伝って顎から落ちる。パタリ、スカートに丸い跡が出来た。
憎しみを抱くのがそんなに罪なのか。欲を持つのが、そんなに罰せられるべきことなのか。野望を持つのが、そんなに悪いのだろうか。悪はどこにある。弱さにあるのか、愚かさにあるのか、怯える群衆にあるのか――どこにもない。どこにもなかった。ダリルはかつて己が抱いた考えを思い出す。ダンブルドアがクィレルを批難するのを聞いて、クィレルを擁護するために考えたことだった。
『悪とは、彼とは、そういうものなのかもしれない』
目の前にも? ダリルはヴォルデモートを見つめる。目の前にも、ないと言うの? この邪悪な魔法使いも、悪くないと言うの?
それは“悪”が“悪”ではないと言うのと同じことだ。
ダリルはグイと目元を拭いて、スカートをこする。涙を零したと言う痕跡を失くしてしまいたかった。
「私、貴方の事嫌いだわ」ぽつんとそう零すと、胸の内に靄が立ち込めた。
言わないでも良いのにと思ったし、殺されるかもしれないと思ったが、ヴォルデモートはピクリとも動かなかった。
「……奇遇だね。僕も君のことが大嫌いだよ」俯いたままのヴォルデモートが乾いた笑いを絞り出す。ダリルの顔が曇った。
「それはつまり、私が死んだら嬉しいということ?」
「君の愚かさを形容するのに無駄な体力を使いたくない。黙っていろ」
ゆっくりと視線をあげたヴォルデモートはいつも通り全てに無関心な、飄々とした顔をしていた。ダリルを冷たい視線で射抜いてから視線を本に戻す。パラリとページの捲れる音がした。
「わかった、わ」ダリルは掠れ声でヴォルデモートの望みに頷いた。それに頼まれたとしても、何か喋れる気分ではない。しかし一つ、言っておかなければと口を開く。「あの」ヴォルデモートが怒気に満ちた一瞥をくれる。ダリルは俯いた。
「さっき、触って、ごめんなさい」
ヴォルデモートが瞳を伏せる。「次はない」穏やかな声でダリルを咎めて、それきり二人の間に会話はなくなってしまった。ヴォルデモートは淡々とページを捲っているし、ダリルも再びあのコムズカシイ序文を読み始めた。しかし頭のなかにあるのはマーティン卿が闇の魔術の発達へ如何に助力したかではなく、先ほど頭に流れ込んできた何かの記憶についてだった。
『お前達みたいなマグルに、僕の何が分かる』
埃っぽい暗い部屋に一人で佇んでいる子供。誰の手も差し出されず、慰めひとつない。聞こえてくるのは罵倒ばかりだ。ダリルは“それ”を見なかったことにしよう、聞かなかったことにしようと努めた。マーティン卿に集中しようと望んだ。それでも思考に割って入ってくる不快な声、子供のものとは思えない憎悪――ダリルには、その台詞の一つでさえ理解出来なかった。
世界からマグルやマグル生まれの魔法使いが消えたら、この男は幸福になるのだろうか。
ダリルは自分を見ることのない赤い視線の先を辿りながら、ふとそんなことを思った。ダリルを殺せば、彼は幸福になるのだろうか。
心の置き所のない不運な子供の姿を、ダリルは目の前の男に見出していた。
七年語り – CHAMBER OF SECRETS