七年語り – CHAMBER OF SECRETS
35 愚者の瞳
ダリルの問いを受けて、ヴォルデモートは数分ほど黙し、思案顔をしていた。
自分如きの謎かけへこんなに真剣になるとは思わなかったが、ダリルはその疑問を打ち消した。ヴォルデモートのプライドの高さを思い出すに、恐らく“ダリル如き”の出した謎かけだからこそ白旗を上げたくないのに違いない。
ヴォルデモートはあらゆる点でダリルに勝っている。そんな彼だからこそダリルの問いへ答えられないというのが屈辱的なのだろう。しかしダリルには、ヴォルデモートには絶対に答えられないだろうという自信があった。ヴォルデモートは顔を歪めて、ダリルを見やる。
そのままたっぷり一分はダリルの目を見つめ続けていたものの、ふいと視線を逸らしてから浅いため息をついた。
「……誰、ということは特定の人物のことなのかい?」
どうやら妥協したらしかった。ヴォルデモートは右手で前髪をかきあげ、その赤い瞳を悔しそうに歪ませる。
「その通りよ」ダリルはこくりと頷いた。
「僕が考えた限りでは、その言葉に当てはまるのは人というよりも概念に近い。
前半部分までなら何とか人を形容したものに思えなくもないが、後半部分は明らかに個を指したものではなくなっている」
そう洩らすヴォルデモートは酷く不機嫌そうだったが、ダリルは「それだけ分かるなら大したものだ」と思った。尤もダリル如きに、こんな上から目線の称賛を受ければ一層彼の機嫌が悪くなるのは必須だろう。
しかしヴォルデモートがダリルの謎かけに乗ってきた時点で、“今だけは”ダリルが優位となっている。勿論それは吹けば飛ぶような仮初めのものではあるが、ダリルにはそれだけで十分だった。ダリルはヴォルデモートを真っ直ぐ見据えながら、これから己が仕出かそうとしている事の重大さを測っていた。それは“計画”の精度を上げようとしてのことではない。そもそも、今からダリルが仕出かそうとしている事は所謂“無計画”の筆頭に立つものだ。故に己の感情を平静に保つための夢想を続けていると言った方が正しいだろう。
ヴォルデモートはダリルから注がれる視線へ気付くと再び視線を戻し、そのブルーグレイの奥にある感情を伺った。一見穏やかに見えるが、何かしらの感情を押し殺しているようにも見える。どの道ダリルの口にした謎かけが単なる暇つぶしではないことは明白だ。
「少なくとも、それは人を楽しませるために考えられた文章ではないね」
「そうだと思うわ。私がこれを聞いたのは夢の中でだから、謎々として整っていないのは明らかよ」
彼女にしては珍しく飄々とした台詞に、ヴォルデモートは己で答えを得る事を諦めた。
「――答えは?」
「貴方が白旗を上げるとは思わなかったわ」
ダリルは微笑んだが、笑っているのは口元だけだった。一瞬、瞳に動揺が過ぎる。その動揺が何に対するものかは分からなかった。
「まどろっこしいことは嫌いなんだ」
ヴォルデモートもダリルと同じに口元にだけ笑みを作り、視線を鋭くする。
勿論互いに謎かけに答えられず白旗を上げたなどと思ってはいなかった。ヴォルデモートは下手な小細工をせずにハッキリ言ったら如何だと暗に滲ませ、そしてダリルもヴォルデモートが言下に匂わせた本音に気付いている。ダリルはごくりと喉を嚥下させた。
赤い瞳が己を射抜かんと、凝視していると思えば声が掠れる。迷いが胸の奥から湧きあがり、ダリルは今ならまだ後戻り出来ると――そう思った途端に緑の光が胸に満ちるのを感じた。自分がどこへ進もうとしていて、どこに戻ろうとしているのか、今は分かる。
「その人は一見して魅力的であり、容易に人を惹きつけることが出来るのですが、そうやって惹きつけた人へ心を開く事はありません」
凛と、鈴を転がすよりも軽やかな声が漆喰塗の壁に反射して、じわりと部屋に滲んだ。
訝しげに眉を寄せるヴォルデモートへ、ダリルは優しく微笑む。
「人々は彼の魅力に当てられ、彼へ手を伸ばすことを強く望むのですが、望めば望むほど彼は人を遠ざけます。
彼は人々を愚かだと見下しますが、それでは彼と並ぶほどの人物になれば彼が心を開いてくれるかと言うと、そうではないのです」
ダリルはぎゅっと強く拳を握りしめた。言い終えるまで、恐怖も躊躇いも怯えも言葉に絡めてはならない。その瞬間、己の言葉は彼にとって何の意味もなくなるだろう。単なる小娘の世迷言として、ヴォルデモートは嘲笑うに違いない。
「寧ろ、彼は己よりも素晴らしい人物と出会うや否や、それらの人を敵だと決めつけて、排除しようとします」
薄紅色の唇から零れる音に揺らぎはなかったし、そうでなくてはならなかった。
ヴォルデモートはダリルの言葉の意図を掴む事へ意識が向いていて、ダリルが感情を押し殺していることにまで気が回らない。そしてダリルが己を怒らせるはずはないと、愚かにも過信しきっている。ヴォルデモートがダリルに関わったのは、その意識をジニーの日記から外すことが目的だと言っているし、ダリルもそうなのだろうと納得した。だから用済みとなったダリルがヴォルデモートを怒らせれば、その先にあるのは“死”なのだとダリルは分かっていたし、そしてヴォルデモートもダリルがそう理解していると知っていた。前提条件は整っている。ヴォルデモートの誤算は策を弄せば弄するほど穴が分からなくなることと、ダリルの愚かさを履き違えていたことだ。
「つまり彼に惹かれる人々は永久に見下されながら、望んでも応えてくれることのない彼を求め続けるのです。
彼を見た者は皆彼に惹かれます。そして彼を見ないものは、永遠に彼の存在に気付きません」
ダリルは今からヴォルデモートを怒らせる気でいた。トムの憎しみを聞いた時と同じだ。ヴォルデモートに揺さぶりを掛けることで、また何か情報を得ることが出来るかもしれないとダリルは推測し、多くを考えた結果、試す価値はあると判断した。
『僕に触るな』
ダリルの手を拒絶した声はヴォルデモートという“概念”の発したものではなかった。
その黒いローブの下に、数十年の時が培った壁の向こうに、激しい拒絶の奥に何が居るのかダリルは知りたい。例えその代価に己の命を求められようとダリルはもう言葉を止める気はなかった。今やダリルの瞳にも口ぶりにも一遍の動揺さえ存在しない。
「彼はそれが許せない」
少女の声でキッパリ断じられた台詞にヴォルデモートは険しい顔をし、「ダリル」その表情に似つかわしくない甘い声で彼女を呼んだ。
「それ以上語るのは得策ではない――僕は少なからず君を気に入っている。愛玩動物としてね」
ヴォルデモートの咎めにダリルは首を傾げて、ほんの刹那まで朗々と語っていた唇を閉ざす。その視線が赤い瞳に注がれた。
「利口なペットは主人の手を噛んだりしないものだ」
白く骨ばった手のひらがダリルに差しだされる。「君は黙って、僕の退屈を紛らわしていればそれでいい」ダリルは木箱から立ち上がり、数歩前に進んだ。ヴォルデモートの前に立ち、その足元へ膝をついて彼を見上げる。赤い視線の鋭さが緩んだ。
ダリルの薄紅色に色づいた唇がゆるゆると開かれる。ヴォルデモートは指でダリルの頬に触れ、そのまま唇まで指を滑らせる。すらりと伸びたヴォルデモートの指がダリルの唇を捉えた。ダリルが主人の愛撫を受ける猫のように瞳を細めれば、彼はそれに満足したらしい。油断は隙を招く。それを知らないヴォルデモートではあるまいに、ダリルの胸が僅かに痛んだ。
私は貴方のペットではない。人形でもない。貴方の道具でもなければ、手足でも、下僕でもない。
ヴォルデモート、私は貴方のものではないわ。
ダリルの胸の内は穏やかだった。瞼を下ろし、ヴォルデモートが触れている唇をそっと動かす。話はまだ終わっていなかったし、ダリルはヴォルデモートに屈する気もなかった。ただ彼の言う通りに傍へ近づいたのは、事が起こった時になるたけ苦しみたくなかったからだ。
「甘やかに人を誘う貴方へ惹かれて、その心の置き所へなることや、貴方の心を開くことを望んでも叶わず、そして見下されるだけの身分に甘んじなければ貴方に切り捨てられてしまう。人は貴方に気がついた瞬間から善悪の選択肢に気付き――貴方のすまうところへ落ちて行こうとしている。これは貴方のことだけど、貴方には永遠に分からない。これは貴方という悪に出会った人のことでもあるから」
ヴォルデモートの体が強張るのが、その指先から伝わる。
「貴方は、自分に無関心な人達を蹂躙することにしか関心がない。自分を軽んじて、意識へ留めることさえ怠った人達のことしか」
「黙れ」
その声には怒気が満ちていたが、僅かに動揺が絡んでいた。ダリルは怯まない。
「貴方を捨てて行った人を滅ぼすことしか興味がないのよ」
微かにその声を震わせたのは恐怖からではなかった。拒絶の奥にいるものを傷つけるだろう冷酷な言葉を口にし続ける残酷さへの後悔が、ダリルを戸惑わせる。それでも言葉は止まらない。ダリルは憎悪に染まった赤い瞳を真っ直ぐ覗きこんで、畳みかける。
「知られることも、見られることも、語られることも、求められることも、許せない。でも無関心でいられることも、無視されることも、口の端に上らない事も、見捨てられることも許せな――」
冷気が首に絡みつく。いや、ヴォルデモートの両手がダリルの喉を潰そうとしていた。その瞳には言い知れない闇が映っている。ダリルの姿さえ映すことが出来ない、深い闇。彼が育った場所。
「あなたは……わがま、まな、こども」
頬を伝い、顎から落ちた涙が、ヴォルデモートの手に零れる。喋ろうとしても、声にならない音しか出てこない。初めて会った時に絞められた時よりも強い力が込められ、ダリルは目の前の男が本気であることを理解する。勿論、こうなるだろうことは分かっていた。それでも、まだ言いたい事は全て言い終わってない。ダリルは苦しげに顔を歪め、息を吸おうと口を数度開け閉めした。不意に肺に空気が満ちる。ダリルは呼吸を繰り返すことへ意識を向けるあまり、己が床に押し倒されたことに気付くのが送れた。
ヴォルデモートはダリルの胸のあたりに跨り、殺意の満ちた瞳でその顔を覗きこんでいる。倒す瞬間に緩んだ手は再びダリルの首をきつく締めてきて、時が経つにつれて痛みは鋭くなった。それでも、あと少しなら話すことが出来るとダリルは口を開く。
「し、の呪いを」痛みに引きつる顔を無理に笑わせる。「使いな、さ、よ」
「……楽に死なせると思うのか」
敵意と拒絶と殺意と、あとはもう、数え切れない悪感情で拘束された台詞が降ってくる。ダリルは全ての力を振り絞って、ヴォルデモートの顔へ手を伸ばす。「それで、貴方がこうふくになると、いうなら」涙はまだ頬とヴォルデモートの手を濡らしている。「きょうふから逃れられるなら」指はヴォルデモートの鼻すら掠められず、落ちて行く。上昇は困難だが、下降は早い。
ダリルは落ちた手をヴォルデモートの手に寄りそわせた。
概念としての存在になりつつあるヴォルデモートを人として留める、楔になりたい。かつてハリーがダリルに手を差し伸べてくれたように、ダリルもこの孤独な子供へ手を差し伸べたい。産まれてくることは、それだけで幸せなのだと信じたい。どんなに愚かな選択をしようと、いつか救われると、ダリルは信じたい。人として生きる私達は理解しあえるのだと信じたい。
人という生き物のなかに完全なる悪は存在しないと信じたい。それがダリルがクィレルの言葉に出した答えだった。
ダリルは血の巡りを阻まれて雪のように白い頬を動かす。笑った。
「あなたのた、めに、しんであげる」
氷に触れる指先からよく分からないものが流れ込んでくる。それは一言で表せば混沌であり、ダリルの頭のなかで記憶として広がっていく。トム・マールヴォロ・リドルが孤児院で育ち、やがてホグワーツ魔術学校へ招かれ、純血思想に出会うことで父母へ抱く憎悪を膨らませて行く悲劇であり、ただの少年がヴォルデモートという闇と悪を表す概念に育つまでの物語だった。
子供だらけの場所で誰からも求められず、己の巨大な魔力に翻弄されていく子供。マグルのなかで育つ魔法使いの子供。それは魔法使いのなかで育ったスクイブであるダリルと対極を往くものだ。まるで違うにも関わらず、ダリルは彼のなかに己を見ていた。否、何か少しでも繋がるものが欲しいと、そう思い込んだだけなのかもしれない。この男が“人”たる理由が欲しかった。人を惹きつけながらも心を開かずまた越えることも許さないのがヴォルデモートなのだとすれば、何か一つでもそれから外れれば彼が人たる証拠になると、望んだ。
ぼろぼろと涙が零れる。「だけど――貴方が寂しいなら」そう流暢に紡ぐダリルは傷む喉を顧みることもなく、片手を床について僅かに身を起こした。再びヴォルデモートに手を伸ばす。ヴォルデモートの手はダリルの首から外れていた。
「トム、貴方が寂しいなら私が一緒にいてあげる」
ダリルはヴォルデモートを抱きしめる。
「貴方が死を恐れるなら私が一緒に死んであげる」
床についていた手もヴォルデモートの背にまわし、ダリルは幼子を慰めるようにその背を撫でさすった。
「私は貴方のものにならない。その代わりに私の未来も、命も、貴方にあげる」
人生は選択の連続だ。いつ、どの選択肢で運命が変わるのか、占者としての才も賢者としての知恵も持たない平凡な人間にとって、生きる事というのは靄掛かった山中を往くようなものなのだろう。前も、後ろも、傍らにあるものも見えない。
そういう中で一つだけ見えるものがある。どこへ進みたいか選ぶことが出来る道しるべが見えることがある。たまさかだから、人はそれを幸運なことだと言い、そしてダリルもその“幸運”を知っていた。ダリルにとって、それはハリーだった。ダリルは常に彼を慕い、彼のようになりたいと望んできた。何があっても、彼に何を言われてもその憧憬は変わる事はない。
『貴方は光で、正義で、英雄――だけど私は闇と、悪と、貴方の敵を見捨てられないの』
何も変わりはしないと、ヴォルデモートへ己の温もりを分け与えながら、ダリルはそう思った。ダリルは歩むことを、ハリーのもとへ進む事を諦めるだけだ。ダリルはハリーにクィレルとのことを打ち明けた時にもう心を決めていた。ハリーが嫌いなわけではない。憎いわけではない。恨んでいるわけではない。それでも、この人には私しかいない。ダリルはヴォルデモートの胸へ頬を寄せた。布の向こうの冷気が頬を撫ぜる。黒い布にダリルの涙がじわりと滲んだ。私しか、いない。彼の隣へ、偶然と些細な選択を積み重ねて辿りついたのは私だった――彼の部下でも、彼を心から慕うものでもなく、賢い魔女でもなく、ほんの十二歳のちっぽけな小娘だった。
それでも寄りそうことが出来る。彼のために死ぬことが出来る。
産まれてすぐ捨てられたこの人には共に死んでくれる人が必要なのだ。
誰もこの人と死ぬことが出来ないというのなら私がそうしようとダリルは思った。この人が愛情を知らないと言うのなら、私が注ごう。例えヴォルデモートがそれに報いてくれずとも構わない。知ってしまったから、もう後戻りできない。
どんなにヴォルデモートがそれを否定し嘲笑おうと人の温もりには一定の効能があることをダリルは知っていた。例えヴォルデモートがダリルへ何一つ返さなかったとして、そして今すぐ殺されたとしても、己が紡いだ言葉は無駄にならないとダリルは分かっていた。
何よりもヴォルデモートはダリルを付き飛ばすこともなく、黙って抱かれ続けていた。それだけで十分応えて貰っているとダリルは思った。ヴォルデモートがダリルを嫌っていると言った時感じた違和感が全てを物語っている。
どのような面妖な理由があってのことかは知らぬが、ヴォルデモートはダリルのことを憎からず思っているらしい。
「……もう、寂しくないでしょう」
穏やかな響きがヴォルデモートの耳朶を揺らし、彼を激しく動揺させた。思考回路が多くの情報に埋め尽くされる。何も見えない。暗闇のなかで記憶の海に翻弄される眠りを繰り返す。ヴォルデモートが捨て去りたいと望んだものが強く思考を蝕み、永久の孤独と言うに相応しい悪夢がそこにはあった。そしてヴォルデモートはすっかりそれに慣れていたはずだ。感情は既に擦り切れ、何も己を揺らがすことは出来ない。そこへ明かりが灯る。幼い声が石壁に反射して、眠りから覚醒した赤い瞳に、光を集めて伸ばしたような髪の少年が映る。小さな手のひらがヴォルデモートを抱き上げた。「一緒にいらっしゃいよ。傍にいてあげるわ」ブルーグレイの瞳が赤を捉えて微笑む。
『ここは寂しいでしょう?』
『それって、寂しいのではない?』
いっそその存在すらおぞましいと思わせるほどに愚かなことを口にする生き物。常にヴォルデモートを揺さぶり、深い沼の底に貯まった滓を表層まで引き上げる。愚かで、惨めで、己に相応しくないと封したそれらの欠片を拾って、微笑む。
殺してしまえば良いのに、理性はそうしろと警鐘を鳴らすのに――あまりに愚かだから、自分までその愚かさに思考を惑わされる。
この暗い場所へ貴方を迎えに来るわ。そうしたら、私が一緒にいてあげる。ずっと一緒よ。それはもう、遥か彼方に交わされた紙よりも軟く軽い約束。
男は辛うじて思いだし、少女は未だに、そして永久に思いださない。だからこそもたらすものがある。今この場でヴォルデモートを抱きしめる手はもう幼子のものではない。少女特有の華奢な腕が彼を抱きしめていた。少女はやがて、ヴォルデモートを見捨てて、父を想い死んだ女と同じ年齢になるだろう。そしていずれは誰かと幸福な家庭を築き、愛しい子供を産むだろう。
その未来を全て諦め、ダリルは彼の母の代わりを務めたいと望んだ。それは十二の子供が六十六になる初老の男へ抱くものとしては滑稽な願望ではあったものの、ヴォルデモートは――少なくとも十九で記憶として封印されて以来四十七年の孤独を過ごしてきた彼にはダリルの願いを退けることは出来なかった。理由は分からない。ただ己の望んだ全てを兼ね揃える娘が自分の意思で腕の内に留まっているという現実だけが彼を満たしていた。冷酷な思考回路がダリルの熱に溶けて行く。
ヴォルデモートはダリルの背に腕を回して、花の茎よりも柔い、その腰を抱きしめた。
大した理由もなく、偶然と些細な選択から辿りついた果てを運命と呼ぶのかもしれない。
七年語り – CHAMBER OF SECRETS