七年語り – CHAMBER OF SECRETS
37 隔たり
去年同様、ダリルが目を覚ましたのは全てが終わった後だった。
体を覆うはノリのきいた布団、耳朶を掠めるは忙しない誰かの足音、視界を埋めるは白く波立つカーテン――慣れたスプリングに体を預けながら、ダリルは己が何故ここにいるか考えようとした。ヴォルデモートとの別れが夢よりも遠く瞳の奥でくすぶっている。
ブルーグレイの瞳から涙が零れたのは心の痛みによるものではなかった。全身がズキズキと痛かったからだ。
痛みの余韻にダリルは己が何故ここにいるのか、大体のことを思い出していた。何となく事の次第を理解したダリルは思い切り顔を顰めた。頭痛とは無関係に、不愉快だった。去年といい今年といい、このままでは学期末に倒れるのが恒例となってしまいそうだ。一体何の因果であろうなどと空とぼけたことを口にせずとも、答えは明白である。ヴォルデモートのせいだ。
ダリルは襟ぐりから手を入れて、ぎこちない指つきでそこに刻まれたものへ触れた。焼印を押されたかのような溝が出来ている。
『それと、僕以外の人間に触れた場合磔の呪い相当の苦痛を味わうことになるけど、きちんと言いつけを守っていれば大丈夫だよ』
少しは人の了解を取ってから事を進めろと、ダリルは思った。
ヴォルデモートと別れた後、己が勝手に医務室を抜け出してきた事を思い出したダリルは衣服の乱れを整えると自室を後にした。その時はまだ“事”も起こっておらず、ダリルも全てが終わるまで意識を保っていられると考えていた。いっそジニーが秘密の部屋に行くまで日記の横に貼りついていようかなと思ったものの、それは一応契約違反かと渋々部屋を出たのである。そこまでは何ら問題なく進んだのだが、不運なのは薬草学で汚れた体を清めるために、二学年上の生徒達が談話室へ戻ってきたことだった。
ジョージとフレッドとリーはダリルを見た瞬間凍りつき、アリシアは歓声をあげ、アンジェリーナはダリルに飛びついて来た。その時何を言われたかは覚えていないのだが、フレッドが手に触れた瞬間に言葉では言い表すことの出来ない激痛――無理に言葉にするとすれば、それは体の内の神経が疼き、全身の骨という骨が皮膚を食い破ってはみ出すような痛みだった――がダリルを襲った。
その痛みは皆がダリルを心配して揺すったり、手を握って落ち着かせようとする度に激しさを増し、ダリルは何とか「触らないで」と言おうとしたのだが、自分がそれをきちんと口に出来たか如何かさえ覚えていない。温もりが遠ざかると共にふっと意識が薄れ、それからどうやってここまでやってきたのだろう。ダリルは口元を掌で覆い、眉を寄せた。体の奥にある異物感と、それに血肉を啜られているような嫌悪感があった。休んでいたはずなのに、身体機能が回復したようには思えない。こうしてベッドの上でじっとしているだけでも疲弊していくような虚脱感が体を蝕んでいた。これが他人の魂を己の内に収めるということなのだろうか。
横になっていると口から吐しゃ物が出てしまうような気がして、ダリルは肘をついて身を捩り、軽く上体を起こした。同時に体の中の何かもずるりと動く。ダリルの喉が引きつって、えづいた。しかしシーツの上に零れたのはしゃがれた声だけで、ピンと張られた布は清いままだった。ダリルはぽかんとそこを見つめていたが、垂れそうになった唾液を慌てて手の甲でぬぐった。
そういえば、ヴォルデモートはダリルが眠りについてから三ヵ月が経っていると言っていた。その間何らかの手段で栄養補給はしていたのだろうが、胃のなかに吐けるようなものが入っていなかったとしても不思議はない。ダリルはまだ胸のあたりでゴロゴロしている異物を思いながら、己のことを「毛玉を飲みすぎた猫みたい」と考え、憮然とした表情をしていた。
魂と毛玉は似てもいないし、完全に非なるものであるはずだ。仮にも邪法の一端を負ったはずなのに、この間抜けな表現はなんなのだろう。それとも単に具合が悪いだけで、この異物感を魂に結びつけたのは間違いなのかもしれない。
マダム・ポンフリーがマンドレイク・ジュースをゴブレットに汲み分ける音を聞きながら、ダリルはシーツをじっと見つめる。こうして医務室で体を横たわらせていると、今までのことが全て夢のようだった。本当は三ヵ月も経っていなくて、ダリルが眠りのなかで会っていたヴォルデモートは単なる夢で、スリザリンの継承者は捕まらず、マンドレイク・ジュースで目覚めた被害者たちもやがてこの騒動を忘れて――ダリルの指が胸元をまさぐった。三ヵ月前までは傷一つなかったはずのそこはでこぼこしている。
何もかも現実だった。
ダリルは上体を支えていた腕を倒すと、枕に頭を埋めた。サイドテーブルのへりを見つめて、ダリルは息を絞り出す。
サイドテーブルの上にはルシウスから貰った黒い鍵が乗っていた。パジャマに着替えさせるとき、誰かが外してくれたらしい。
『知らぬほうが幸福なこともある。騙され続けるほうが幸福なこともある。しかし一度知ったなら、お前が納得いくまで知ると良い』
手を伸ばして鍵に触れると、ルシウスの台詞が鼓膜を揺らしていった。父親はレディがヴォルデモートの記憶体だと知っていた。しかし日記が分霊箱であり、レディがその管理者であることは知らなかった。ダリルはぎゅっと強く目を瞑った。一度に多くの情報を得たせいで思考が纏まらない。万ページもあるような本の活字を頭に突っ込まれたようで、情報以上のものとして認識出来ずにいた。記憶や知識はヴォルデモートのものであっても、思考能力はダリルのままだ。一日やそこらで理解しきれるものではない。
ひょっとすると一生かかっても理解できないかもしれない。ダリルは瞼の裏に浮かんでくる古文書の羅列を打ち消すよう努力しながら、引きつった笑みを浮かべた。「僕は十三の時にその本を一日で読み終わった」とヴォルデモートが言っていたのは真実だった。今ダリルの思考回路をかき乱している古代エジプトの碑文に関する論文を彼が読み終えたのは、彼が十六の時だった。
ダリルは記憶のなかの幼いヴォルデモートを脳裏に思い浮かべ、瞳を細めた。恐るべきスピードで知識を身につけていく、やがて優れた魔法使いになる少年。同じ時代に生きていたら、ドラコへそうしてきたように彼を抱きしめて、称賛することが出来たのかもしれない。そう思ったことを自覚して、ダリルは深いため息をついた。
『尤も僕の記憶は全て現在の僕に移行するから、心配することはない』
心配することだらけだろうとダリルは思った。
恐らく“現在の”ヴォルデモートはダリルを気に食わない生き物として感じているに違いない。気に食わないどころか、出来るならすぐに始末してしまいたいとえさえ思っているはずだ。分霊箱のことを知る存在を、彼が放置しておくとは思えない。
己の魂を消すことになるからといって、ダリルを殺さずにおくだろうか。十九歳のヴォルデモートが“日記”から魂を引き抜いたように、ダリルからも引き抜くことが可能であるはずだ。つまりそれを阻止して、目の仇にされないよう振舞う必要がある。従順に――振舞う。
ダリルはその案にどこか不満を抱く己がいることを悟り、自嘲の笑みを口元へ浮かべた。
闇の印を刻まれたということは、死喰い人になったことと等しい。ヴォルデモートへ従順に振舞ったとして、何も可笑しくはないだろう。それでヴォルデモートを人として繋ぎ止めることが出来るのならと、そこまで考えて、生暖かいものが頬を滑っていくのに気付く。
ダリルが引き留めたかったのは誰だろう。半年過ごしてきたのは、誰だっただろう。その相手はまやかしであり、もう何十年も前に潰えている過去の残像なのだ。彼は己がクィレルを殺したと言い、ハリーの両親を殺したと語る。十九歳になるまでに少なくとも三人は殺しているはずだ。人殺しであるという事実は変わらない。それでもダリルと言葉を交わしたヴォルデモートは若かった。六十六にもなった初老近い男が自分の言葉へ耳を傾けるだろうか。そもそも自分のことを“排除するべき生き物”以上に思ってくれるかさえ分からない。
『――僕を救ってくれ』
今の、“現在のヴォルデモート”は“僕”なのか。
日記でも、現在のヴォルデモートでも構わない。どこかにトム・マールヴォロ・リドルがいるのだと、思わせてほしかった。
布団に包まって悶々とするダリルの耳にシャーっとカーテンが開く音が聞こえた。
ダリルは手をついて身を起こそうとした。「無理に起きあがらずとも良いよ。寝ていなさい」ダンブルドアが半月形の眼鏡へランプの明かりを映しながら、微笑んでいた。ダリルはふっと体の力を抜いて、安堵の吐息を紡ぎだす。
クィレルの件故にダンブルドアをいまいち信用しきれずにいるダリルだったが、彼の顔を見ると不思議に安らいだ気持ちになった。恐らくダンブルドアが賢人だと知るからだろう。学内で何があっても、それが法に触れることでなければ人の気持ちを汲んだ結論を出してくれる。今回の事件の真相を知ってもジニーを罰することはないだろう。それにドラコの手紙に書かれていた「ダンブルドアがこの事件が外に漏れないよう口止めしている」という一文も、彼への不信を和らげる切っ掛けになった。
「いいえ、大丈夫です」ダリルは慌てて体を起こし、ダンブルドアの顔をじっと見つめた。「ジニーは、ハリーは……大丈夫でしょうか。それにハーマイオニーやロンも、何処か大きな怪我を負ったりしていませんか? ジニーは元気でしょうか」
「皆無事じゃとも」ベッドから飛び上がらん勢いで問い続けるダリルを片手で押しとどめ、ダンブルドアが呟いた。机の前にある椅子に掛ける。「ジニーには処罰なし、それにハリーとロンにはホグワーツ特別功労賞が与えられる」
「ハリーとロン……?」ダリルがきょとんとした。「ハーマイオニーは一体――まさか」
ただでさえ白い顔から一層血の気を引かせて、ダリルが胸を押さえる。ダリルは苦しげに顔を歪めた。
「大丈夫じゃ。今、マダム・ポンフリーが石になった生徒達へマンドレイク・ジュースを配っておる。皆、すぐに目覚めるじゃろう」
「ああ、そうですか! 本当に良かった。きっとジニーも、すぐに元気になりますよね」
ダリルがきらきらと瞳を輝かせるのを見て、ダンブルドアは奇妙な笑い方をする。笑うというよりは、口元を引きつらせていると言ったほうが正しいだろう。皆の無事を喜ぶダリルをダンブルドアがしげしげと観察していた。それに気づいたダリルが首を傾げる。
「ダリル、わしからも二つ三つ質問をして良いかのう」
何だろうと不思議に思いながら、ダリルは頷いた。ダリルがその台詞の真意に気付くのとダンブルドアが口を開くのは殆ど同時だった。
「三ヵ月の間眠っていて、そしてハリー達が秘密の部屋に行っている間ずっと眠っていた君が、何故スリザリンの継承者の正体を知っているのじゃ?」ダンブルドアのブルーの瞳がダリルを射抜いた。「それと胸にある闇の印についても聞きたいのう」
ダリルはハーマイオニーのことを考えたときよりも尚青白い顔をして、己を見つめるダンブルドアの顔の輪郭だけを見ていた。
「マダムの話では昨晩まではなかったとのことじゃ」
「マ、マダム・ポンフリーはこの、」今まで自分によくしてきてくれた校医が己の胸にある闇の印を見たら、如何思うだろう。それを思って、ダリルの声が震えた。「マダム・ポンフリーは、この、胸の印を……?」狼狽するダリルへダンブルドアは頭を振った。
「わしとセブルスだけじゃ」
「スネイプ教授?」
意外な名前が出てきたことに、ダリルはぽかんとした。ここ最近何かとお世話になっているような気はしたが、スネイプは魔法薬学教授であるし、それにダリルの寮監でもない。何故マクゴナガル教授や、闇の魔術に対する防衛術教授であるロックハートでは――ダリルはぶんぶんと頭を振った。まだ死にたくはないし、骨抜きにもされたくない。
ダリルの思考を見通してか、それともダリルの狼狽を静めようとしてか、ダンブルドアがちょっと笑った。
「セブルスは闇の魔術に対してちょっとばかり知識があってな。それにギルデロイは今少し……」ダンブルドアが口ごもった瞬間、遠くから「まるで魔法だ!」というロックハートのはしゃいだ声と、それを叱るマダム・ポンフリーの怒声が聞こえてくる。
「どうやらロンの杖で、ハリーとロンに忘却術を掛けようとしたらしい」
複雑そうな顔で声の聞こえてきた方向を見やるダリルに、ダンブルドアは感情の見えない厳かな口調で告げた。
ロンの杖がどんなだったかはダリルもはっきり覚えている。あの杖でそんな高度な技を使おうとしては、どうなるか分かったものではない。どのような理由から二人にそんな技を掛けようとしたか分からないので何とも言えないが、一日も早く元に戻れば良いなとダリルは思った。あれやこれやと騒動を起こす教師で、ハリーなどは酷く嫌っていたし、ダリルもそんなハリーを不憫に思ったりもした。それでもロックハートの書いた本が面白かったのは事実だ。「どのぐらい悪いんですの?」ダリルの問いにダンブルドアは厳しい顔をした。
「良くはない」そう零してから、またダリルのほうをじっと見る。「しかし君ほど厄介ではない」
「君にその呪いを刻んだ者はよほど闇の魔術に精通しておるのじゃろう。
その呪いの基本的な働きは表在感覚を刺激されることで発動し、君の周りに強力な魔力の壁を張るということだけじゃ。それだけ言うと盾の呪文と何ら変わりなく思えるが、プロテゴ・ホリビリス以上の強度を得るため……ふむ、愉快犯か普段の君の魔力の量では覚束ぬと思ったか、君の痛覚を刺激することで無理に潜在魔力を引き出す仕組みとなっておるな」
ダンブルドアはダリルの瞳を覗き込みながら言葉を続けた。
「何よりも盾の呪文と違い、これは攻撃魔法以外の魔法ででも発動するように出来ている。勿論盾の呪文を基盤にしているから、攻撃魔法以外を防ぐことはない。つまり君はちょっとした治癒魔法を掛けられても、昼間のように苦しむということじゃ。
尤も、これは単なる悪戯のようなものじゃろうな。一番の問題は微弱な魔法特性を持つ物が触れただけでも反応することじゃよ」
ダリルは胸に刻まれた闇の印がジクジク痛んでいるように感じた。既に口を開く気力もない。そこまで制限を受けているとは思っていなかった。精々少し人に触れないよう気を付ければいいかなと思っただけなのに、ヴォルデモートはダリルを魔法界から追放する気なのだろうか。救ってくれとか殊勝なことを言った癖に、本当は、やっぱり、ダリルが大嫌いなのだろうか。
「命を揺るがすような呪いでないのは明らかじゃが、脳へ直接与えられる痛みというのは十二の少女に耐えられるものではない」
ダンブルドアは険しい顔でそう締めくくった。
正直言うと、ダリルはダンブルドアの説明の半分も理解していない。薄らとは分かるが、思考回路はもうパンク状態であり、自分が置かれている状態と、それに見合う対応というのがまるきり見えてこなかった。ダリルは額を押さえながら、しどろもどろ訳の分からない単語を零していた。ダンブルドアはそんなダリルを見て、眉間に深いしわを刻む。深いため息をついた。
二人して黙していると、不意にカーテンの隙間からコップが差し出された。ダンブルドアはそれを受け取り、カーテンを閉める。
「少し水でも飲んで、落ち着いたら如何かね」
水の満ちたグラスがサイドテーブルに置かれた。手渡しすれば、指が触れ合うかもしれないという配慮だろう。ダリルはダンブルドアの気遣いを有り難く思いながら、コップを手に取った。ガラスの感触が涼しい。水を飲まずに暫しその冷たさを唇で味わう。
「さて、その呪いをかけた人物についてじゃが」
ダリルがグラスを傾けたのを見て、ダンブルドアが口を開いた。ダリルはグラスを唇から離して、首を振る。
「言えません……その、私、言いたくありません」
ダンブルドアの問いを拒絶すると、ダリルは己の内にある気まずさを誤魔化すために再びグラスに口を付けて、グイと傾けた。どんなに厳しく追及されても、水を飲んでいる間は無言でいられる。ダリルは小鳥が啜るほどの量で舌を湿らせ、嚥下した。
「誰が君にその闇の印を刻んだ――」
白い喉が動いたのを見て、ダンブルドアは急いた口調で問いただそうとした。しかしダリルがそれに応えることはなかった。「あ、あっな、――あぁ、あ、うあっハ、ああああ」ダリルがブルーグレイの目を見開いて、悶えはじめた。手から落ちたコップが布団を濡らし、床に落ちる。パンと硝子が弾けて、タイルの上に散らばった。ダリルが身を捩り、ベッドの上から落ちる。割れた硝子が肩に刺さるが、肩の痛みを自覚することはなかった。身を食い破って何かが生まれ出るような痛みと恐怖と嫌悪感が頭をショートさせる。
ダンブルドアが椅子を蹴倒して、カーテンの向こうで控えていたスネイプを呼ぶのも、スネイプが冷却魔法を掛けた腕でダリルを押さえつけるのも、ダリルには何もわからなかった。ダリルの痛みが治まったのは、彼女が真実薬を口にしてから三十分の後だった。
両手をベッドに括りつけられ、ダリルはぐったりしている。痛みは殆ど収まっていたが、肩に刺さる硝子の破片を抜くことさえ出来ない。
放心状態のダリルを尻目にダンブルドアとスネイプは話し合っていた。
「真実薬はミス・マルフォイに苦痛しか与えることはないと忠告したはずでしたな」スネイプがダンブルドアを睨んだ。
「セブルス、ダリルの胸にある魔法陣を解析して逆操作することは出来るかの」ダンブルドアはスネイプの言葉に応えない。
スネイプはダンブルドアの意図を理解して、眉間のしわを深くした。飄々とした表情を崩さないダンブルドアへ責め詰るような視線を向ける。「……この印を刻んだのが想像通りの人物であれば――勿論他の人間が刻めるはずもありませんが、逆操作は無理です」
ダンブルドアが眉を寄せたのを見て、スネイプは吐き捨てるように付け加えた。
「痛覚が一定のレベルに達したら表在感覚を遮断していくことは出来るでしょう」
「出来るかね」ダンブルドアは満足そうに頷く。
出来ないと言ってやろうかとスネイプはチラと考えたが、無論そんなことは言えなかった。
スネイプは感情を押し殺した顔で頷く。「時間を頂ければ」
「わかった。詳しくはまた後で話し合うとしよう」スネイプの言葉へ相槌を返すと、ダンブルドアは胸元から懐中時計を取り出して、短針の位置を確認した。学期末の宴に出席して、寮杯の結果や、他多くを告知しなくてはならなかった。
「わしは宴のほうに行かねばならぬ――セブルス、きみはどうするかね」
カーテンを開いたダンブルドアがスネイプを振り向いた。スネイプはベッドの上でぼんやりしているダリルをちらっと見てから、口を開いた。「この状態でマダム・ポンフリーに任せられるはずもありますまい」
ダンブルドアのブルーの瞳がちょっと笑ったが、それはスネイプの眉間のしわを増やすだけだった。
たかが学生時代の寮とはいえ本人の性質の故に選ぶものだからこそ、その確執は卒業後も続くものだ。
七年語り – CHAMBER OF SECRETS