七年語り – EXTRA STORY
鼻血ヌルヌルヌガーの実験台

 

「はなひ……はな……ぢぃーはなぢー……鼻血が出てるとしゃべりにくいのね」
「ちょ、待て……あれ? 嘘だろ。前試した時は……作ってから時間が経ちすぎてるのか……?」
「……参ったな。ダリル、気持ち悪くない? とりあえず、これ鼻に当てときなよ。マダム・ポンフリーが五月蝿いだろうなあ……」
「ちょっとはなひにくいだけよ。小瓶ちょうらい」
「良いけど、何に使うのさ? ちょ、上向くなって……これ、解毒剤飲むまで止まらな、ねえ、一体君、何してんだい」
「貯めるの」
「おいジョージ、俺はとりあえず解毒剤作りに行ってくっから……ヤバそうだったら医務室行っとけよ」
「ああ、任せた。貯めるって……スネイプの頭にでもぶっかける気か? それ、本当の本当に血液だぞ……増血魔法も混ぜてあるから貧血状態になることはないと思うけど、駄目だと思ったらすぐ言えよな。分かったか?」
「痛みなしで自分の血を集められる絶好の機会よ。折角集めた血をスネイプなんかでろうひするつもひはない、なにするのよ」
「いや、そりゃ俺だって君に説教したくてたまンないわけじゃないさ。でもダリル、血を使うのは」
「ホフンクルスを作るの」
「はあ?」
「ホフンクルス、小瓶を返してちょうだい」
「あの……そりゃ俺は錬金術に詳しいわけじゃないけど、ホムンクルスの材料に血を使うなんて聞いたこともない」
「ホフンクルスは材料に精子を使うことと子宮内の温度を再現することとで懐妊を模してるのよ。重要なのは人工懐妊の体を取り繕う事であって、材料に精子を用いることじゃあないわ。もひろん精子を使うのが一番手っ取り早いけど――あなた、私に精子を集めろって言うの」
「だ、ホムンクルスの生成なんて授業で習うことじゃない」ジョージの耳が薄ら赤くなった。「そうだろ? あれはかなり高度な魔術だ」
「そうよ。だからスキルアップに繋がるわ。ためひてみたいの。さっき食べた鼻血ヌルヌルヌガーや、ハリーたちの“ご趣味”よりかはかなり安全で……真っ当な好奇心よ。失敗したって、まあ、爆発することはないわ」
 階下から爆発音が聞こえてきた。遅れて湧きあがった嬌声から鑑みるに、シェーマスだろう。
「……君、本当にホグワーツの教授職を目指す気かい」
「さあ、如何かしら」ダリルは素知らぬ顔で顎に垂れる血を拭った。「ポンとなれる職業じゃあないわ。少なくともチャーミングスマイル賞は必要ね。それに、他人の名前を続けて三回言う癖もつけなくっちゃ。ねえ、そう思うでしょ? ジョージ、ジョージ……フレッド?」
「茶化すなよ」
「あら、パーシーみたいなことを言うじゃない。貴方達が歳の離れた三つ子だなんてしらあ……」
「馬鹿言ってないで、ほら、タオル。気分は如何だい? あと五分経ってもフレッドが戻ってこなかったら、マダム・ポンフリーだな」
「そりゃあ良くはないわ。でも、行かなくたって大丈夫よ。貴方達が如何にかしてくれるって、知ってるもの」
「教師なんて、つまんないぞ。俺達みたいな将来有望の生徒がいたって、大人ぶって注意しないといけないし、同僚にはスネイプだ」
「なれるかろうかもわからないのに、本気に取るなんて。あなた、ホグワーツの教授職を得るのがどれだけ困難か分かってないわ」
「そもそも、君が何なのかだって分かってないんだ。精確なところを推しはかれるわけもないだろ」
「……教授職につけなかったら、お店で働かせてもらうわ。ね、良いでしょ。ジョージ、ジョージ、ジョージ」
「ふーん、如何かな! まずは履歴書を拝見させて貰わないと。ミス・マルフォイ、資格欄にあるチャーミングスマイル賞とは何ですか?」
「はい、面接官さん。週刊魔女の読者たちが選んだ、今最もチャーミングなスマイルを浮かべる魔法使いに送られる賞のことですわ。多くの魔女を虜にした私の笑みは、必ずや貴店のレジでも活かされることとおもいまふ」
「大丈夫?」
「平気よ。痛いとか、頭がクラクラするってことはないわ。ジョージだって試したんでしょう」
「そりゃね。幾ら何でも、自分の体でちょっとも試してもないものを他人に食べさす気にはなれないよ」

「そうでしょうね。でも私、こうして鼻血ダラダラ流したり、頭からカナリアの羽根生やしたまんまでいるの、そう嫌いじゃないわ」
 

鼻血ヌルヌルヌガーの実験台

 
 


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