七年語り – EXTRA STORY
トイレのはなし
「でもスリザリンって、変人よね。何故女子トイレに秘密の部屋の入り口を作ったのかしら」
「……あれは、後に女子トイレにされただけであって、元々は単なる洗濯部屋だった」
「そうなの? なら如何してトイレなんかにされちゃったの?」
「洗濯部屋にしては内装が整ってたし、生徒数が増えたからって理由で女子トイレにされたんじゃないかな。洗濯を外部に委託するようになってからは、洗濯部屋は使わなくなったしね」
「そうなの、じゃあ可愛そうね。私、スリザリンのこと変態さんかと思ってたわ」
「変態って……仮にもホグワーツの創設者である偉大な魔法使いを女子トイレ覗きが趣味の変態って……」
「そこまで言ってないわよ。ねえ、秘密の部屋ってスリザリンだけにしかないのかしら」
「そうかな。探せばあるかもね」
「貴方がみつけてないんじゃ、ないわ」
「君、必要の部屋って知ってるかい。否、思い出せるかって聞いたほうが良いのかな」
「あ、あーと、少し待って」
「学生の時分にはもう色々と有効利用させてもらっていたからね。君の台詞が確かなら覚えているはずだ」
「自分で有効って言うの、如何なのかしら。ええと、あ、ん、八階にある変な部屋のこと?」
「そう。三人のうちの誰か――グリフィンドール塔の入り口付近だから、グリフィンドールが作った隠し部屋かもしれない」
「それだったら面白いわね。私も今度、使ってみようかしら」
「何か企むには秘密の部屋を使ったほうが便利だと思うけど? あそこなら邪魔が入ったとしても精々ポッターぐらいのものだからね」
「企むって、何よ。それに必要の部屋のほうが便利そうじゃない」
「そのままの意味だよ。必要の部屋の存在を知るものは少ないけど、場所が場所だ。万に一つとは言え誰かと鉢合わせる可能性もある」
「それだったって、第一私は蛇語喋れないもの」
「僕が喋るのを真似るぐらい出来るんじゃない?」
「そ、その程度で入れるの?」
「多分ね。認証システムがお粗末だから。千年もの間誰にも開かれなかったのは、偏に入口が女子トイレだったからに違いないよ」
「……仮にも尊敬しているらしき相手の組んだ仕組みへ随分な言い様ね」
「まあ、僕が蛇語を喋ってるのも思い出せるだろう。再現してみなよ」
「話を逸らしたわね」
「そんなことはないよ。ほら言ってごらん」
「だい、じょうぶ……かしら?」
「大丈夫だって、ほら」
「ええと、じゃ、じゃあ、でも、意図的には喋れないと思うわ」
分かったわね? と念を押してから、ダリルは口を開いた。
「しゅー」
何を根拠に「大丈夫かしら」などと判断したのだと、リドルは思った。
「しゅるー」
ダリルはリドルの膝の上で、真剣にしゅーと呟いている。それはただ「しゅー」と蛇の音を真似ているだけで、響きを似せようと努力した痕が全く見られないとか、やる気があるのかとか、色々な事を問い詰めたくなってしまう台詞だった。
小難しい顔で「しゅー」と零し続けるダリルにリドルの口端がひくりと動く。
「ふしゅ、なっ、何で笑うのよ!」
「ふ……っ、ク、しゅーって、君、」リドルがぎゅっとダリルを抱きしめて、低く笑った。「何が、だいじょ、くっ」
「もう良い! 秘密の部屋なんて行かないもの!」
ダリルは耳まで真っ赤に染め、毅然と言い放つ。それでもリドルの笑いは収まらない。
「口で言って如何す――ふっ、く」
「楽しそうで結構ですこと!!」
七年語り – EXTRA STORY