七年語り – EXTRA STORY
虚偽を綴る

 

「ハリー! だーれだ!」

「ちょ、ダリル、文字が曲がった!」
「詰まらないの。少しは悩む振りぐらいして頂戴」
「手離してくれる? ていうか、フレッドとジョージは如何したの?」
「私を追っ払いたいってんならお生憎様。二人はフィルチとデートの真っ最中よ」
「君が免れるなんて珍しいね」
「本当にラッキーだったわ。それで同じく、“珍しく”もハリーが勉強してるみたいだから、邪魔してあげようと思ったのに」
「そりゃ有り難いね。ハーマイオニーがいるときに思いついてくれれば、泣いて喜んだよ。それに今は勉強してるわけじゃない」
「何書いてるの? 日記?」
「あーあ、書き直しだ……手紙だよ」
「そのぐらい大丈夫――て、え? 手紙?」
「クリスマスを一緒に過ごす家族すらいない僕が手紙を書いてたら、変だって?」
「もう、そうじゃないわよ! 貴方、もっとカルシウム取った方が良いわ。私はただ、貴方が手紙を書いてるのが、その、珍しくて」
「結局“そう”じゃないか。まあ、良いけど」
「どっちよ。新しく書きなおすなんて、ハリーって几帳面なのね」
「大事な友達に染みのある手紙を送りたくないだけだよ」
「……大事な友達なの?」
「うん。そりゃ確かに……顔も知らない相手だけど、でも僕がクィディッチ選手になった時からずっと手紙くれてるんだ」
「そうなの、その、良いお友達ね」
「君もそう思う? そうだよね。一年以上も手紙送ってくれるような人が僕に害をなすはずがないよね」
「えーと、まあ、そうね。単なる文通相手が害をなせるはずないもの。きっとそのお友達、貴方の事がとっても、すきなんだと思うわ」
「そうかな?」
「手紙をやり取りするのって結構面倒なことよ。私も文通していたことあるけど、途切れちゃったわ。だから、続いてるんなら、そうなのよ」
「そっか、そうだと良いな。僕も彼女のことが好きだから、ずっとこうして手紙やり取り出来たらって思うんだ」
「そうね、ハリーがそう思ってるなら、ずっと続けられるわよ」
「……さっき君にあんなこと言ったけど、僕に手紙を送る家族がいないってこと、君も知ってるよね?」
「知ってるわ。でもそんなの大したことじゃないでしょう」
「うん、そうだね」

「ミス・レターが僕に手紙をくれるから、僕もそう思える」

「家族がいて、それで――僕のことを気遣ってくれたら、こんな風なんだろうなって思うんだ。
 顔も知らない相手だけど、だから、実は僕に姉がいたんじゃないかとか、それとも双子の姉か妹でもいたんじゃないかって、勿論そんなの絶対にないだろうってきちんと分かってるよ。でも……それでも……ミス・レターは僕だけ見てくれる。僕のことだけ気遣ってくれる」
「……良い友達ね、ハリー」
「有難う、ダリル」

 ハリー、お願いだからそんな風に笑わないで――私は貴方に残酷な夢を見せているに過ぎないのではないかと怖くなるから、ミス・レターに寄り過ぎないで――単なる文字よりもずっと身近に貴方を想う相手がいることを見過ごさず、孤独ではないと気付いてほしい。

「貴方には良い友達が一杯いるわね」
 傲慢で無責任な願望だとは分かっているが、貴方にはトムの味わった孤独を感じてほしくないのだ。
 

虚偽を綴る

 
 


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