七年語り – EXTRA STORY
あのひとを想起させる童話

 

「だーれだ」
「……幾らここがホグワーツだからって、僕にこんな馬鹿をするのがお前以外にいると思うのか? 離せ、本を読んでるんだ」
「嫌あね、そんなところばっかりお父様に似てしまって。隣、座るわよ」
「制服に草がつくだろう。なにか敷いてから座れよ――父上の血を引いているんだから、趣味嗜好、仕草やらが似てくるのも当たり前だ」
「有難う、ドラコ。わざと似せてるんじゃあなくって? どうせ似るなら、お父様みたく私を膝の上に乗せてくれても良いのに」
「ハンカチを敷いてやっただけ感謝しろ。大体そんなこと、またウィーズリーのアホ……そうでなくても、他人に見られたら如何する」
「こんなとこ、誰も通りかかりはしないわ。大体、それを知ってて読書しに来たんでしょう?」
「じゃあ、お前こそ、こんな人気のないところに何をしにきた。いつもの、ウィーズリーの双子との悪巧みだろう」
「違うわよ。私もドラコと一緒、本を読みに来たの。こういう、涼しくて、低木に囲まれて安心できるような場所、昔から好きよね」
「そうだな。お前は昔っから僕を見つけるのが得意だった」
「ドラコの行動パターンって読みやすいんですもの。ねえ何を読んでるの――ゴデロットの……覚書……お父様の書棚から持ち出したのね」
「ちゃんと許可は取った。母上の書棚から好き勝手抜き出すお前と一緒にするな。お前は……児童書か」
「禁書棚に並ぶ本を読むよりは、おとぎ話でも読むほうがずっと良いでしょう。『豊かな幸運の泉』を久々に読みたくなったのよ」
「ああ、うちにある本だと黒塗りにされてるからな。図書室で借りてきたのか? お前の本だって、父上の検閲を免れなかっただろう」
「お父様の執念深さは、本当に嫌になるわ。フィクションでぐらいマグルと魔法使いの結婚を許したって良いのに」
「父上は僕ら子供達がああいう下世話な話に感化されることを恐れてるんだ。それに、それがなくたって如何でも読まなきゃいけないほど面白い話でもない。僕は父上の言う通り子供に読ませるべき内容じゃあないし、大人が読む価値もないと思うね」
「勇敢なアマータに跪いて愛を誓うラックレス卿は素敵でしょう。私とっても感動したわ」
「ほーら見ろ。お前みたいな頭の軽い奴が影響されると察した父上の聡明さが知れるな。僕も検閲される前に読んだっきりだけど、あのネックレス卿とかいうマグルの騎士はあんまりに女々しかったじゃないか。奴とくっついた魔女も失恋のあまり気が狂っているだけにみえた」
「違うわ。アマータはラックレス卿の素直さと誠実さに惹かれたのよ。そういうひとって、とっても素敵だもの」
「お前の知り合いにネックレス卿みたいな白痴なんていたか? ウィーズリーの双子やポッターでも奴よりは頭があるだろう」
「セ、ラックレス卿は白痴じゃないわ。優しくて誠実だけれど、その落ち着きから少し控えめな風に見えるだけよ」
「何でそこまで熱くなるんだ。フィクションだろう」
「もう、ドラコなんて嫌い! お父様といい、ドラコといい、たかが娯楽さえ許容出来ない狭量な男の人って詰まらないわ」
「待て、なん、たかがおとぎ話だろう!? 何をそんなに怒って、おい、ダリル!! お前、お前こそ少しは落ち着いたらどうだ」
「知らない。私はラックレス卿を探すので忙しいから、ドラコは一人で闇の魔術について造詣を深めてれば良いじゃない」
「僕は……僕は、お前がマグルなんかと口を利くようなことがあったら、そのマグルもお前も許さないからな」
「許さないって、どうせお父様に告げ口するのが関の山でしょう。魔女がマグルと結婚するのが許せないんだったら、本を黒塗りにしたりする前に、マグルよりずっと魅力的な男性になるよう努力するほうがずっと有意義だわ」
「父上をこれ以上魅力的にして如何す――おい! お前、本当に、暫く口を利いてやらないからな!!」

「どうぞご自由に。私はラックレス卿とお喋りするのに忙しくなりますので」
 

あのひとを想起させる童話

 
 


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