七年語り – EXTRA STORY
びみょうなかんけい

 

「あら、ロン」
「ダリル」

「「一人なんて珍しい」」
 思いがけず重なってしまった台詞に、二人して真顔になる。

「……私はフレッドとジョージの付属品か何か?」
「その言葉そっくり返すよ。二人は?」
「貴方、私が何歳か忘れているようね。みーんな、天文学に出払ってるわ。そっちこそ、二人は?」
「ハリーはウッドに引きずられていった。ハーマイオニーは図書室で、レイブンクロー寮の子となんか話しだしたから置いてきたんだ」
「ああ、それは私でも置いてくるわね。今度は何の話してたの?」
「知らないね。ボルジアの毒薬だとか何とか言ってた。ねえ、ディーンとシェーマス知らない?」
「ネビルの罰則を邪魔しに行ってるわ。地下牢脇のトイレよ」
「罰則?」
「フィルチの目の前で鎧を倒しちゃったの。ディーンが廊下の脇からネビルを押したのよ、運が悪かったのね」ダリルは肩を竦めた。「原因を作ったってのに、自分だけ罰則を免れたのを悪いと思ってるみたい。今頃三人でおまる拭いてると思うわ」
「あいつもタイミング悪いよなあ。でも君、何で知ってるの? 居合わせたわけ」
「いいえ。二人に頼まれて、ネビルの傍からフィルチを追い払う手伝いしたの。ドミノ倒しみたいに、順繰りに爆発する仕掛けを設置しておいたのよ。今頃それを追ってるんじゃないかしら。ゴールは天文塔に設置してきたわ」
 ダリルの悪戯っぽい笑みに、ロンは呆れたように頭を振った。
「一体いつの仕返しだい」
「さあ、忘れちゃったわ。きちんとフィルチの速度と糞爆弾の爆発するタイミングと二人の授業が終わる時間を合わせてきたのよ」
 ロンはダリルから差し出された羊皮紙へ視線を落とした。ざらりとした紙面には導火線を辿る火の速度・フィルチの歩幅・ホグワーツの地図等の情報が雑多に記されていて、それらを囲むように並べられた計算式が何を示すのかはロンには分からなかった。
 ダリルは好きなタイミングで糞爆弾を爆発させることが出来る、二つ名をつけるとすれば糞爆弾の魔術師で決まりだ。とはフレッドとジョージの言である。聞いた時は話半分としか受け取らなかったが、この羊皮紙を見る限り二人のフカシでもないらしい。
「フレッド達がさぞかし喜ぶだろうね。二人ともサプライズが大好きなんだ。ま、専ら“するほう”なんだけど」
「あの人達、昨日私の事見捨てて逃げたのよ」やっぱり忘れてないじゃないかとロンは思った。ダリルはロンからもぎ取った羊皮紙をぐしゃりと握りつぶし、タクトのように振り回した。「私、何もしてないのに、二人と遭遇したってだけでスネイプ教授の部屋を片付けるはめになったわ。糞爆弾に何か細工したらしくて中々落ちないし、スネイプ教授は糞爆弾よりねちっこい嫌味をご披露して下さるし、とっても素晴らしい三時間だったわよ。それに比べればフィルチに急かされながら廊下にモップを掛けるのはずっとマシでしょ?」
「君ってつくづくスネイプに目の敵にされてるよね」
「ハリーよりはマシだわ」
「僕にすりゃどっこいどっこいだな。ハリーは父親とスネイプが仲悪かったらしいけど、君は仲良いんじゃないの?」
「お父様とスネイプ教授は仲良いし、ドラコとは仲良いわよ。でも私のことは嫌いなの」
「君、奴に何やったの?」
「ハリーに比べれば何もやらかしてないに等しいわよ」
「そりゃハリーは僕らの前じゃボロクソ言うけど、本人の前じゃ割合大人しいぜ。君は本人の前でもボロクソ言うじゃないか」
「一回目の授業で生意気なこと言ってたじゃない」
「あれは先にスネイプが言いがかりつけてきたんだ――それに、君はいつでも生意気なこと言ってる」
「何よ、ロンは良いわよね! スネイプ教授と健やかな関係を築けるのだから、本当に羨ましいったらないわ」
「君らは少し自分を押さえるってことを学んだ方が良いかもね」
「らって何なの。君らって」
「君とハリー。要らない争いを拾ってくるのが得意、なんてのは褒められたことじゃないだろ?」
「その口ぶりじゃ、私がロンに尻ぬぐいさせてるみたいじゃない」
「フレッドとジョージにさせてるじゃないか」
「そんなに……そんなにさせてないわよ」断定は出来ないと判断したらしく、ダリルは渋い顔をした。「兎に角、ハリーよりはマシ」
「そうかな?」
「そりゃ私だってスネイプと一緒にピクニック行ったりは出来ませんけど、ハリーがあれやこれやに首を突っ込まない年があって?」
「まあ、それは……話が違うだろ。君だって色々突っ込んでる」
「違わないわ。私が一日単位で小さなあれやこれやと揉めているとするなら、ハリーは年単位で大きなあれやこれやと揉めているのよ。まあ、それで良い結果を」残しているのだから、私とは違うかもしれないけど――そう続けようとしたのを、背後の誰かさんに遮られる。
「君達、僕のいないところでいつもそんな話してるの?」
 あまりにもにこやかな声に、二人の表情が固まった。

「僕の悪口を言いあいながら密接な仲を築いてらっしゃるようで、友としては涙が出るほど喜ばしいね」
「ああ、ハリーおかえりなさい! お疲れ様!!」
「お、お疲れ。やけに早いじゃないか。如何したの?」
「窓見れば?」
 外はどしゃぶりの雨だった。ハリーの気持ちと一緒だ。クィディッチに最低の天候、そして友達二人が自分の厄介さについて話し合っているのを聞いてしまってクソッタレな気分。ハリーは手近のソファへどすんと腰を下ろした。ロンとダリルが大慌てで背もたれにかじりつく。
「私達、悪口言ってたんじゃないわ! ロンと二人きりって凄く珍しくて、だから私達ハリーの話になっちゃって」
「なんで一人かってこと話してた――フレッド達も、他の寮生も誰もいないし」
「僕の悪口に花を咲かすには絶好のタイミングだったと」
「ハリー、違うのよ! 如何して私がハリーの悪口で盛り上がれると思うの? そりゃスネイプでだったら盛り上がるけど」
「僕は絶対にそんなことしない! 喧嘩した時はするかもわからないけど、今は違う」
「どうだか」

 ハリーの機嫌を直すのに、二人掛かりで宥めすかして一時間以上掛かったのは言うまでもない。
 

びみょうなかんけい

 
 


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