七年語り – EXTRA STORY
双子の神秘
「フレッドとジョージって、一方が怪我をするともう一方もってことあるの?」
「どっちかが怪我をすると?」
「双子の神秘って奴を体感したことがあるかってことかい」
「そうそう」
「ないね」
「いやいや相棒、レイブンクローのとある女生徒を見たときには俺達二人して胸が締め付けられたよな?」
「なーる。あれが双子の神秘か」
「ふざけてるの? それはただ好みのタイプが一緒っていうだけでしょう」
「“ただ”って言うけど、マルフォイとダリルにはその“ただ”もないんだろ? 立派な双子の神秘ってもんじゃないか」
「私とドラコは性別が違うのよ。好みのタイプが一緒だったら、どっちかが同性愛者になっちゃうじゃない!」
「そういえば君達二人、ハーマイオニー嬢に対しては強い反応を示すよな、あいてっ」
「失礼ね!」
「俺の足を踏むのは失礼じゃないって? 第一言いだしっぺはジョージじゃないか」
「ちょっと待った。俺はダリルが同性愛者だなんて言った覚えはないぞ」
「お前がフレッドじゃないという証拠はどこにある」
「それ以上続けるなら顔に名前を書くわよ。大体ねえ、確かにハーマイオニーは可愛いけどドラコの好みは、」
「ダリル」
「お前、いつもそうやって僕の情報をそいつらにベラベラ話してるのか」
「ド、ドラコ、一人? 珍しいのね」
「話を逸らすな」
「ダリル、マルフォイの初恋の相手が誰かって教えてくれる約束だったろ?」
「ああ、それにマルフォイの好みの女の子のタイプもまだ教えてもらってないぜ」
「そ、そんなの教えないわよ!! 教えるなんて約束したことないでしょ!」
「そうだそうだ。初恋の相手はもう教えてもらってたな」
「俺達うっかり忘れちゃってたよ……ルシウス・マルフォイの後輩の奥さんだったか」
「嘘よ! 嘘、そんなの言った覚えないのに! え、なんで知ってるの? 私、いつ喋ったの? あ、待って、私も言う、言うから!!」
「それを言ってどうなるんだ。お前の初恋の相手なんて、どうせ父上か僕だろう」
「すげーなその台詞。父親は兎も角、妹の初恋相手が自分だなんて例え仲良くてもハッキリ言えないだろ……」
「双子だからって普通兄妹でこんなにベタベタイチャイチャするもんか?」
「し、知らないわよ! 男女の双子なんて、会った事ないもの。あ、ドラコ待って! 言って良いから! 言いふらして良いから!!」
「……急いでるのは怒ってるからじゃない。人に呼ばれてるんだ。大体妹の初恋の相手は僕だなんて言いふらせば、僕のほうが恥ずかしいじゃないか。分かったら、袖から手を離せ。別れる時はそう言うから、二歩後ろに下がって大人しくしてろ」
「じゃあ、許してくれた?」
「ああ、好きにしろ」
「誰に呼ばれてるの? 女の子?」
「フリント、これからクィディッチの練習だ」
「へえ、今日はスリザリンが予約取ってんのか」
「お前らも卑怯な手ばっか使ってないで、たまには正々堂々突っ込んで来いよ」
「卑怯な手ではなく戦法と言って欲しいね」
「反則ギリギリの戦法ねえ」
「実力に乏しい奴らは大変だよなあ。小賢しい戦法とやらを考えなくちゃいけなくってさ」
「フレッド、ジョージ、年下相手に二対一で口喧嘩ふっかけないで頂戴」
「おい、こいつは叱らないのか」
「貴方達が煽るまで、ドラコはきちんと無視してたじゃない」
「ダリルのいる時だけな」
「お前がいない時のこいつを見せてやりたいよ」
「年上への敬意ゼロ、他人への気遣いゼロ、そして無尽蔵の嫌味」
「急いでるので、先輩たちが僕に用がないってなら行かせて頂いて結構ですかね」
「聞いたか、これだよこれ」
「俺達が言った事の揚げ足取りばっか」
「お前らが敬意ゼロって言うから、わざわざ丁寧に言ってやったんだろう。折角僕が折れてやったってのに、一体何の文句がある?」
「どこが“折れてやった”だ。第一その上から目線が、」
「ドラコ、急いでるんでしょう! 行って大丈夫よ」
「そうさせて貰うよ。こいつらとばかり喋ってると馬鹿が移るぞ。下賎の者と付き合うのも大概にしておけ」
「はいはい。練習頑張ってね」
「下賎の者とか言ったぞ」
「フレッドだって、毛根に負荷のかかる気障ったらしいヘアスタイルをしてる陰険なチビとか言ってるじゃない」
「あいつの言う嫌味に比べりゃ可愛いもんじゃないか。あと俺はジョージだ」
「分かったわジョージ。兎に角ドラコには後で言っておくから、貴方達もドラコにあんまりちょっかい出さないで頂戴」
「へーへー」
「ダリルとマルフォイが全然似てないのって、正しく“双子の神秘”だよな」
「ああ、逆に神秘的だな」
「に、似てるわよ! 昔はそっくりだったんだから!!」
「なんだなんだ、マルフォイがスカートでも履いてたのか?」
「私がズボンを履いて、ショートカットにしてたの」
「なあ、それでどうやったら自分と同じ顔の奴に惚れられるんだ」
「まあ今でも十二分にナルシストの気はあるか……」
「違うわよ! ドラコが好きになったのは髪を伸ばして、スカート履くようになってからだもの」
「それはそれで問題だろ」
「え、問題なの? やっぱりナルシストなの?」
「いや初恋の相手が兄って言って無問題だと思ってるところとかかな……」
「俺、ジニーがまともなことに感謝しちゃったよ」
「どんなに可愛くても妹は恋愛対象外だな」
「じゃあ、どんなのが恋愛対象で、どんな子がタイプなの? ドラコと私の初恋の相手聞き出したのだから、代わりに教えて」
「あー、レイブンクローの、チャンだっけ? あいつで」
「そうそう。そんな感じ」
「分かったわ。アンジェリーナに教えておくけど、良いのね」
「何でそこでアンジェリーナが出てくるんだよ。おい、何笑ってるんだ」
「いや、色男は大変だなあと思ってね」
「ねえ、フレッドはアンジェリーナが好きなんでしょう。ジョージもアンジェリーナが好きなの?」
「俺は違う」
「俺も違う」
「フレッドはそうでしょ」
「違う。俺はフレッドじゃない」
「嘘つくなよ相棒」
「やっぱり顔に名前書いておこうかしら」
「書かせてやるから、もうマルフォイの話も今の話も止めにしてくれ」
「あら、フレッド。貴方の首、ジョージが昨日掻き傷作ったところに痣があるわよ」
七年語り – EXTRA STORY