☆登場人物
志村名前…ダンゾウの姉、マダラ信者
モブ山モブ美…やや腐っているマダラ信者、マダラ総受け短歌を詠むのが趣味
モブ川モブ子…腐っていないマダラ信者、マダラの絵を描くのが趣味
うちはマダラ…ちょっと前に死んだ
千手柱間…ちょっと前から死にそう
千手扉間…毎日カリカリしてる



「このマダラ様が火影さまと出会った川のほとり、いつ来ても私泣いちゃう」
「名前の気持ちわかる。火影さまの『気持ち少し上に投げる感じ』から始まるヤツね」
「『そんなことわかってる……オレが本気出せば届くさ(キリッ)』! もうあたしも投げちゃう!!」
「もーーーーモブ美ずるいずるい!! 私も!! 私も水切り……もーーーー出来なあい!!!」
「『貸して見な……モブ子』」
「やめて!!! 名前の声真似あまりにマダラ様に似すぎてヤバイ!!」
「もうありったけの石投げちゃう……凄い、今の私、マダラ様が触ったかもしれない石投げてる」
「だめ、向こう岸が少しずつ広がってくのにこっちの河原の石が減ってくから敷地が狭くなってくじゃん? あたしもうダメになりそう。マダラ様と火影さまの運命を示すようでしんどい。待って、ちょっと瞑想させて。瞑想からの一句読む。昨日の任務で使ったチャクラが一気に回復した」
「マダラ様クラスタあるあるだよね……だって考えてみ、ここにマダラ様がいたんだよ……十数年前、私たちが今いる場所にマダラ様がいて火影さまとの決裂に心が血を流していたわけじゃん?」
「やめよ、まだこれからマダラ様の墓参りも残ってるのに切なさに身悶えが止まらなくなる」
「私、ちょっと子ども時代のマダラ様の想像図とか描いていい? あまりにインスピレーション湧きすぎてヤバイ。私が火影さまだったら絶対真数千手出てるレベルに創作意欲が湧いてくる」
「二人ともマダラ様のこと絵や文で残せていいよね。私も絵とか描く練習しとけばよかったな」
「でも、名前凄いじゃん」
「そうだよ。あたしらがこうやってマダラ様の思い出に包まれていられるのはさ、名前が火影さまを酔い潰して色々聞き出してくれたから……だからマダラ様の思い出ツアーが出来るんだよ」
「それはそうなんだけどね、もっと全身でマダラ様への熱を表現出来たらなーって。なんて、ないものねだりかな。マダラ様なんかあんなにイケメンで頭脳明晰でお強くてらっしゃったのに友達一人いないもんね。年賀状とか一枚も貰ったことないらしいし、流石マダラ様だよね」
「孤高のお人でも、年賀状欲しいとか思うのかな」
「人間ってみんなないものねだりなんだよ。きっと、火影さまに素直に年賀状欲しいって言えるような人だったら……ごめん、涙出てきた。どうしても二人のこと考えると感極まっちゃう」
「私たちは里抜けしないどこうね。素直に、ありのままの欲をさらけ出して生きてこ」
「こうやってさあ……里抜け考える前に自分を見直せるのも、マダラ様のおかげだよね」
「うん……」
「やっぱ凄いや、マダラ様は」
「じゃ、そろそろ行く? あたしはもう一句読んだし、モブ子は描き終わった?」
「あっ待って待って、待って、ごめんさっきのは描き終わったんだけど、もう一枚だけ描かせて」
「だって、名前? 名前何虚空見上げてるの? マダラ様の霊魂でも漂ってた?」
「『オレ達の言ってた……バカみてーな絵空事は』」
「え、名前やめて、マダラ様の思い出ツアー中にそれはダメって前の時約束したじゃん」
「『オレ達の言ってた……バカみてーな絵空事は……しょせん、』」
「「「届かない……っ!!」」」
「結局モブ子も言ってるし」
「最早言うしかなくない? あまりに、あ、やば、巻物に涙落ちてマダラ様の口元滲んじゃった」
「あー! ごめん!! そこまでちょっと考えてなかった……ごめんねモブ子」
「良いよ良いよ、帰ってから描きなおすし」
「ほんとにごめん、気持ちが昂りすぎた」
「わかる。私も気持ちが昂りすぎて今すぐにでもマダラ様に会いたくなっちゃった」
「じゃ、行こっか。瞬身の術使う?」
「せやね」

「あれ? なんか前来たときとちょっと違うくない?」
「え、何? 何何何? 何? あたしら以外にこんなとこ来るとか火影さまぐらいだよね?」
「まあ、そうだよね。扉間さまとか、マダラ様の死体置き場に死んでも近づきたくないだろうし」
「あーそういうとこある。扉間さま、ほんとにマダラ様のこと嫌いだよね。嫉妬?」
「てか名前、火影さまなんか死ぬみたいな噂あるけどマジのガチ?」
「うーん、マダラ様殺すのにちょっと張り切りすぎた感じはあるけど……私医療忍術サッパリだし、つーかそもそも火影さまは人知の及ばない生命体だから何とも言えないよね」
「あの人なんなんだろうね。絶対人間ではないよね」
「だよね。ほら、火影さまが帰ってきてからさ」
「帰って来てってーか、あたしら終末の谷の死闘ライブで見てたから、どっちかといえば“帰ってしまわれた”ってのが正しいよね。扉間さまがピリピリしてるのは、もしも火影さまが負けそうなら手助けしろって言ってコッソリうちらを寄越したのがバレたからなんじゃないの」
「火影さま、被害が拡大するだけだから誰も手を出すなって言ってたもんね」
「マダラ様への愛を感じるよね……」
「いや、それは単に火影さまが優しいだけっていうか、真面目に水差すイコール“死”だし、火影さまがやられかけた時には手に汗握ったよね。流石にまだちょっと死ぬのは怖いし……でもマダラ様にだったら……? うーん、でもやっぱ妹たちがアカデミー卒業するまでは生きてなきゃな」
「モブ子はいいよね……家族仲良くて。うちも妹いるけど、ゆとっててウザい」
「うちは両親共に死んでるしね。協力してやってかないとならないから」
「そう聞くと大変そうだけど、やっぱ仲良いのは羨ましいよ。私、マダラ様の命日に家帰ったら玄関で待ってた弟に『死ねばいいのに』とか言われたよ。なんか趣味のマダラ様ストーキングで外出してるんだと思われたみたいで、密命だから“任務だった”って言うわけにもいかないし」
「それで最近のダンゾウくん、外で名前と会ってもシカトこくんだ」
「でも名前が帰ってくるまで玄関で待ってたんでしょ? ダンゾウくんはツンデレなの? それともいの一番に名前を罵倒したい一心で待機してたの?」
「多分後者でしょ。あの子は今、扉間さまへの愛が高じ過ぎて、それ以外のことが全部有象無象に思えてしまう年頃なんだよ……最近ヒルゼンくんともピリピリしてるしさ――あっピリピリしてると言えば、火影さまの容体だけど、扉間さまが代わりに仕切りだしてからもう二か月?ぐらい経つけど、どんどんピリピリみが増してるから今回本当にヤバいかもしれない」
「盛大に話ズレてたね」
「ねえ、火影さまが死んだら扉間さまが火影になるんでしょ」
「そらーそうよ。扉間さま以外に適役はいないでしょうよ」
「名前速攻クビになるんじゃないの。仲悪いじゃない」
「仲悪いんじゃないよ!!! どんだけ怪我負ってもサックリ治っちゃうようなビックリ人間の体調を遠方から観察して随時サポートしろとか無理難題言うあの人が可笑しいんだよ!! 火影さま目に見える傷はないんだもん!! 如何見ても致命傷なかったじゃん!?」
「ああ、里帰ったらなんか体のほうは傷塞がってたもんね」
「ぐったりしてたけどね」
「そしてぐったりしたまま回復しないから扉間さまが毎日毎日チクチク私をイビるじゃない。駄目かもなーあんだけピリピリしてるってことは扉間さまの大好きな兄者が未だに回復しないからなんだろうし……もう駄目だよ……一週間ぐらい休んで良いっていうからウキウキで思い出ツアーしてるけど、もうほんとクビかもしれない。どうしよう。団子屋でも開こうかな」
「ちょっと、あれ、ヤバくない?」
「だよね。完全に窓際追いやられてるよね」
「いや、そうじゃなくて。名前、モブ美、見て。マダラ様の墓の蓋になんか隙間あってヤバイ」
「モブ子さあ、たまにはヤバイ以外の言葉も使おうよ」
「使ってるよ! 使ってたじゃん!!」
「あんなん、あれでしょ。扉間さまが墓蹴ったんじゃない。あの人、そういうとこあるよ」
「マダラ様って生命力強かったし、火影さまへの友情が高じて魂出て来ちゃったんじゃない?」
「てか、あれだよね? 封印してあるんだよね? 蓋に隙間あるってそれ解けちゃってない?」
「気のせいっしょ、扉間さまが三日ぐらい徹夜で頑張ってたしそれはなくない? あんだけ私にグチグチ言いながら健気に張った結界がものの二か月で駄目になるのは流石に面白すぎない?」
「それは正直ウケるけど、でもマダラ様の死体って部外者に持ち出されたらヤバくない」
「いーよ、そしたら取り返せばいい。戦争になるならなるで、私はそれでもいい」
「名前はそんな調子だからダンゾウくんに忌み嫌われるんだよ」
「だって私強いもん。マダラ様への愛を表現するための絵も小説もエッセイも俳句も作れないけど志村一族の跡取りとしてメッチャ修行に修行を重ねて覇権取れるよう頑張ってきたのに実戦出て即乱世終わっちゃうし、母上も父上も火影さまの理念を深く知りもしないで帰属しちゃうし……」
「名前さあ、この墓地知ってる人って何人いるの?」
「あれ? 何人だっけ……私たちと扉間さま。それと火影さま。四人」
「壱、扉間さまが墓を蹴った。弐、マダラ様の魂が出てきた」
「参、マダラ様が実は死んでなかった?」
「それはない。正直興奮するけど、バックリ刺されてたし流石にそれはないでしょ。壱だよ」
「でも扉間さま几帳面だし、ズレたら直しそうな気がするんだけど」
「それはね。でも、あの人イライラしてる時は左右違う柄の靴下履いてたりするよ」
「ウケる」
「てかさ、マダラ様死んでから弱ってる火影さまが同じ墓に入りたくて開けた可能性は?」
「モブ美さっきからずっと思ってたけど、すぐ同性愛にするのやめて」
「モブ子がそういうの苦手だからってあたし抑えてるじゃん! このぐらい良いでしょ!?」
「二人は高潔な友情で結ばれてたの!!! すぐ恋愛に持ってくのほんと駄目!」
「恋愛とか友情とか以前に元気いっぱいに殺し合ってたけどね」
「それを踏まえてマダラ様と火影さまの間にどんな感情の芽生えや絆があったか想像するのは自由じゃん。少なくともマダラ様のほうは二人っきりで殺し合いたいぐらい愛してたわけだし」
「それな、何度考えてもヤバみがあるよね」
「ほんとヤバいわ」

おわり